本研究は、後代の註釈文献や写本欄外註に散在するウトパラデーヴァ著『主宰神の再認識詳注』断片を蒐集することを通じて、そのテキスト全体を可能な限り復元することを目的とする。 2018年6月から2019年3月まで、フランス・パリ第三大学へ渡航し、共同研究者であるイザベル・ラティエ博士と研究を進めた。帰国後、引き続き、ラティエ博士は、Chetan Pandey氏によって提供された写本から新たに回収された『主宰神の再認識詳注』断片の校訂および翻訳を行っている。 研究代表者は、その他の写本の欄外註から回収される断片を調査している。加えて、本年度も引き続き、研究協力者の石村克氏の協力のもと、南インドの註釈文献に含まれる『主宰神の再認識詳注』の断片を調査した。南インドで著された『主宰神の再認識偈』に対する注釈『アンヴァヤディーピカー』において、ティーカー(詳注)という名の著作が言及されているが、『主宰神の再認識詳注』の断片は見出されていない。『アンヴァヤディーピカー』では、引用元を明示することなく、アビナヴァグプタの『主宰神の再認識反省的考察』を引用していることがほとんどであった。『アンヴァヤディーピカー』は16世紀前後にカルナータカでナーターナンダによって著されたものである。また『パラープラーヴェーシカー』に対する二註釈、チダーナンダによる注と、17世紀頃のカルナータカで著されたハリハラシャルマンによる注のいずれにおいても、『主宰神の再認識詳注』は確認されていない。16世紀頃のカルナータカには、『主宰神の再認識詳注』は伝承されていない可能性が高い。 以上の研究成果については、公開を準備している。
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