本プロジェクトの最終年度は、これまでの研究成果の一部をまとめた研究発表を国際学会で行うと共に単著の原稿執筆を進めた。またタイとシンガポールにて短期の補足調査を実施した。 2023年7月にイタリアのトリノで開催された2023 European Conference for South Asian Studiesにオンラインで参加し、シンガポールにおけるインド系女性舞踊家の歴史と多文化主義との結びつきに関する研究発表をパネルセッションで行った。同パネルにはヨーロッパのインド芸能研究者が多数参加しており、多くの示唆に富んだコメントやヨーロッパの状況に関する知見を得ることができたほか、同パネルの成果論文集を刊行する話が進んでおり、新たな国際的ネットワークの構築にも役立った。 またこれまでの成果をまとめた単著の執筆を進める傍ら、出版社と出版に向けての協議を進め、来年度の科研費の出版助成への申請の準備に着手した。さらに2023年8月と10月にはタイのバンコクにてインド芸能の新たな受容動向とヒンドゥー教の祝祭に関する現地調査を行い、2024年3月にはシンガポールにてコロナ状況下における各種芸術機関の活動実態に関する補足調査を実施した。 研究期間全体の成果としては、国際学会で積極的に研究発表を行い国際的な研究ネットワークの構築を大いに進めることができたほか、国際シンポジウムの企画・開催を行い、関連分野で優れた研究業績をもつ外国人研究者を日本に招聘し、議論を公開することができた。本研究を通じて構築した国際的な研究ネットワークをもとに、インド舞踊のグローバルな受容動向についてインド・東南アジア・欧米諸国の動態を多国間で有機的に結びつけ、ホスト社会やグローバルな政治・市場と戦略的に関わりながら、インド古典舞踊の継承を通じたコミュニティの再編や新しい協同関係の実態を浮かび上がらせることができた。
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