研究課題/領域番号 |
17KK0041
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高篠 仁奈 東北大学, 農学研究科, 准教授 (80507145)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2019
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キーワード | ジェンダー / 経済発展 / アジア |
研究実績の概要 |
基課題では、農村女性の地位と権利意識を決定づける社会・経済的要因を明らかにし、女性のエンパワメント(能力・地位の向上)に役立つ知見を探るため、経済学的アプローチによる研究を行っている。女性の地位向上を主目的として発展したジェンダー研究と、宗教や伝統的慣習を熟知する地域研究の視点を取り入れ、異分野融合の視点を取り入れた研究を行う必要性が生じた。
そのため、2018年9月より、6カ月間、オックスフォード大学国際ジェンダー研究センターに所属しMaria Jaschok氏の受け入れのもと研究を実施した。2018年10月にはIGS Seminar Series にて基課題に関する研究内容を報告し、国際ジェンダーセンターと外部の文化人類学者、社会学者などさまざまな異分野の研究者から、申請者の専門とする経済学とは異なる視点から概念の定式化、調査方法、今後の課題設定など、新たな視点から有益なコメントを得た。2018年11月には共同研究者を英国に招へいし、国際ジェンダー研究センターに所属する研究者らと討論を行うことができた。議論で得た知見をフィードバックして課題設定に取り入れ、インド農村における新たな調査研究を行っている。また、滞在中、英国内における研究会に参加し異分野の研究者と意見交換を行うことで国際的なネットワークを広げることができた。2019年2月には東北大学国際共同大学院プログラムの訪問団を受け入れ、オックスフォード大学の研究者と今後の連携の可能性について議論した。
2019年3月にはアムステルダム大学に移動し研究を実施しているが、受け入れ研究者であるSpronk氏には、渡航前から関連する研究者を紹介頂き、共同研究についてメールで議論を行っていた。現在は、共著論文を執筆するための調査研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渡英し、研究について議論が深まるなかで、渡航前に想定していた調査を修正し、より重要性が高いテーマについて調査を行うことになった。そのため、研究計画の通りには進行していない部分もあるが、逆に、想定以上に多くの研究者との意見交換をすることで思いがけない新たな視点からの示唆を得ることができ、日本からの英国訪問団を受け入れるなど、計画以上の成果を得ることもできた。特に、東北大学の教員、大学院生、学部生ら15名の訪問を受け入れ、研究者との交流の場を設けることができたことは、今後の研究連携と学生への教育に意義のあることであった。
以上の理由より、当初申請していた調査内容通りではないが、新たに得た着想を生かして臨機応変に修正を加えながら基課題を発展させることができている。また、ネットワーク形成については想定以上の成果を得ており、調査研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
インド農村での調査研究については、英国での議論を踏まえた論文を作成し、6月に共同研究者が国際学会にて成果を報告する予定である。新たな着想を得て開始した研究課題については、現在、アムステルダム大学の研究者から重要な文献などの示唆を得ながらアンケート調査の設計を行っており、5月中にアンケート調査を実施する。並行して文献調査と2次データに基づく国際比較を行っているが、この成果については、2019年5月下旬に、アムステルダム大学にて、学生、研究者、活動家などに向けたセミナーで報告予定である。アンケート調査の結果を分析し、6月下旬にアムステルダム大学に所属する研究者を対象とした研究会にて報告、討論を行う。これらの研究成果は、アムステルダム大学所属の研究者と共著論文としてとりまとめて、今年度中の国際学術誌投稿を目指す。
以上の調査研究に加えて、本研究課題の重要な柱である、欧州における国際研究ネットワークの形成も推進する。7月にはアムステルダム大学で開催予定のジェンダー政策学会に参加しジェンダー関連の研究者を中心に交流を行う。また、8月下旬の帰国までに、ワーヘニンゲン大学やエラスムス大学ロッテルダム・社会科学大学院大学(ISS)を訪問し、農村社会学、ジェンダー、開発経済学などさまざまな分野の研究者と意見交換を行い、今後の共同研究や教育研究連携の礎となる関係を築く。
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