研究課題/領域番号 |
17KK0042
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 栄一 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (50370078)
|
研究期間 (年度) |
2018 – 2020
|
キーワード | 公選職 / 教育政策 / 首長主導教育改革 / 教育委員会 / 教育行政 / 民主性 / 専門性 / 教育長 |
研究実績の概要 |
(1)渡航先の受け入れ教員との打ち合わせを行った。渡航先に予定しているアメリカ合衆国ニューヨーク州コロンビア大学ティーチャーズカレッジのジェフリー・ヘニグ教授と電子メールで打ち合わせを行った。相互の問題関心が教育と政治の相互作用にあることを確認した。政治家は教育政策に関与することで自らの政治的地域を得る(もしくは強化する)ことが可能になると考える。他方、伝統的に教育政策に関与してきたアクターはそうした政治家の関与に対して抵抗する。まず、こうした二律背反的なシンプルな分析枠組で研究に着手した。 (2)ヘニグ教授の著作The End of Exceptionalism in American Educationの翻訳作業を行った。公選職(大統領、議員、知事等)が教育政策に関与している実態をアメリカの文脈をふまえて訳出することにより、日本との比較研究のポイントが明らかになってきた。たとえば、教育政策に新たに関与するアクターとしてアメリカで重要なのは新興の利益団体である。その活動が議員の政策選好に影響を与えることが推測できる。このことから、日本における教育政策への公選職の介入についても、政治家(政党)、官僚制にくわえて圧力団体も考慮する必要があることが指摘できる。これまで以上に政治学の分析視角を適用するべき研究課題であることがわかった。また、翻訳権を日本国内の出版社を通じて取得し、出版に向けて出版社と調整を行ったほか、翻訳を分担する研究者たちとの打ち合わせをグループウェアで行ってきた。 (3)官僚制、政治家、圧力団体に関する研究書籍をリストアップし、次年度以降の研究に活用する体勢づくりを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)交付内定をふまえて渡航先の研究機関(アメリカ合衆国コロンビア大学ティーチャーズカレッジ)および海外共同研究者(ジェフリー・ヘニグ教授)との調整を進めてきた結果、正式に客員研究員としての受け入れが決定し、渡航先機関への滞在に必要な手続きが完了した。 (2)交付申請を行い、交付決定が年度末になされたため、今年度は具体的な研究成果を得たというよりは、研究を開始するための準備が進捗した。 (3)その上で、渡航後の研究を円滑に開始できるように、本研究課題に密接に関連する研究書籍のリストアップを行った。特に、官僚制、政党、圧力団体に関する最新の研究書籍を重点的にリストアップの対象とした。 (4)本研究課題の遂行には1年間の海外渡航が必要である。そのため、所属研究機関での本務(研究、教育、管理運営、社会貢献)については、代替要員等の雇用をはじめとする適切な対応が必要となる。本年度はそのような対応を行ってきた。たとえば、渡航期間中の非常勤講師から内諾を得た。また、学生の指導体制の変更についても所属機関内の調整を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)2019年度(令和元年度)の9月から海外研究機関へ渡航する。それに先立って、必要な所属機関内の調整を進める。 (2)渡航前から海外共同研究者との打ち合わせをこれまで以上に密接に行うこととする。そのことを通じて、相互の問題関心、研究方法について齟齬のないように努める。これに関連して、日本の状況について適切に英語で説明できるように、あらためて専門用語の英訳や、海外での用語法について検討を加える。さらに、ここ最近の日本の教育政策の動向についてもまとめておくことが必要である。特に、中央政府については、教育改革の立案について文部科学省にのみ帰責する傾向が見受けられるので、学術的な観点からその再検討を行う必要がある。そのために必要なのは官僚制(文部科学省)だけでなく、政治(政党、政治家)、圧力団体を対象とするバランスのとれた分析視角の導入である。 (3)アメリカの最近の教育と政治に関する動向についてもフォローを開始する必要がある。特に、近年、海外共同研究者であるヘニグ教授が解明を進めているのがフィランソロピー団体の政策的影響力である。巨額の資金を擁するこうした団体が教育政策への影響力を強めていることを、圧力団体論の観点から理解することができるかどうかを検討していく。
|