研究実績の概要 |
意思決定は直感的・感情的な処理と熟考的・理性的な処理が関与しているが,直感的・感情的なプロセスには文化差があることが知られている。例えば,アジア圏では穏やかな感情状態が重視されるが,欧米とくにアメリカでは覚醒度の高いポジティブな感情状態が重視される。しかしがなら,このような文化による違いが高齢期でもみられるのかは検討されていない。 また,重視される感情状態だけでなく,感情をコントロールする方法にも文化差があり,感情のコントロールにどのような方法を用いるかが,意思決定プロセスにも影響することが最近の研究より明らかになってきた。 感情調整の方略には,ストレスとなる事象の捉え方を変えるといった方法や,感情を表出しないようにするといった個人の中で完結するものと,他者に相談することで不安を解消するというような他者とのコミュニケーションで行う個人間感情調整がある。個人間感情調整は海外では注目されているものの(Hofmann, 2014; Zaki & Williams, 2013)日本では測定する指標がない。そのため2019年度は,20-70代の各世代156名ずつ,男女936名を対象とし,海外の指標を参考に,日本版の個人間感情調整尺度の作成をおこなった。また,調査の結果,個人内感情調整の適切な方略の使用は加齢とともに増加する一方,他者とのコミュニケーションを基盤とする個人間感情調整は加齢による減少が認められた。2020年度はこのような傾向が欧米でもみられるのか検証する。
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