意思決定のプロセスには文化差があることが知られている。例えば,アジア圏では穏やかな感情状態が重視されるが,欧米とくにアメリカでは覚醒度の高いポジティブな感情状態が重視される。しかしがなら,このような文化による違いが高齢期でもみられるのかは検討されていない。 本研究の目的は1)アメリカと日本の文化的価値観の相違が,高齢期の意思決定時の情報処理プロセス,及び,選択後の満足度や後悔に及ぼす影響を明らかにする。2)日常生活場面での意思決定に文化の相違が及ぼす影響を検討する。3)目的1と2をふまえ,多様な価値観に応じた「選び方を選ぶ」自律支援プロブラムを開発する,ことである。 本年度はCOVID-2019により予定していた海外でのデータ収集を進めることができなかった。そのため,日本において,意思決定に関する感情の中でも「後悔」に着目し,選択の方法が後悔に及ぼす影響について20歳から70歳までの成人200名を対象とし検討を行った。その結果,意思決定の効用を最大化することを重視するマキシマイザーのほうが,満足できる基準を重視して選択するサティスファイサーよりも後悔感情をいだきやすいことが示された。また,先行する選択において良い結果が得られていたのに,その後,同じ意思決定場面において前回とは異なる選択をし,悪い結果となった時,マキシマイザーはサティスファイサーよりも後悔を強く抱くことが示された。この結果は,後悔を避けるためにマキシマイザーは現状維持の選択をする傾向があることを示唆している。一方で,今回の研究はCOVID-2019の影響でWEBを介して実施したため,意思決定課題が現実場面で意思決定ではなくシナリオ課題であった。そのため,本研究で得られた結果が日常生活の意思決定をどこまで反映しているのかさらなる検討が必要である。
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