超高齢社会において,自分らしい人生の締めくくりは重要な課題である。そこで近年注目されているのがACP(Advance Care Planning)という概念である。これは,もしもの時に備え,将来の医療及びケアについて,患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的プロセスのことを指す。本年度は,日本の文化的背景における価値の認識と心理的well-beingの関係性の特徴を示し,今後のACPの在り方に対する提言を行うことを目指して,以下の2点を検討することを目的とした。文化的背景の異なった対象者を比較することで,第一に,価値に対する認識と,価値にコミットメントした行動の反映の度合の文化差の実態を明らかにする。これまでの研究は,個人が自らの価値を認識するという行為そのものが,心理的変数や行動に影響することが示されている。また,人生の価値を明確にすることは,抑うつや不安,強迫性障害のみならず,がん,肥満や体重管理,職場ストレス,燃え尽きなど,広範囲の対象に良好な効果をもたらす。第二に,価値の認識が,価値にコミットメントした行動を取ることにつながり,心理的包摂well-beingを高める媒介モデルの文化差を年代に着目して検討した。 20歳から79歳までの日本人1616名,欧州系アメリカ人2444名,アジア系アメリカ人1050名を分析対象とした。 価値の認識において,欧州系アメリカ人は年代による有意差はないが,アジア系において20代<30-70代,日本人において50代<その他の年代という結果となった。人生受容については,欧州系・アジア系アメリカ人は,年代があがると共に高まる傾向があるのに対して,日本人では,年代による有意な違いがみられなかった。
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