研究課題/領域番号 |
17KK0051
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野澤 充 九州大学, 法学研究院, 教授 (70386811)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2022
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キーワード | 公共の平穏 / 社会法益 / 国家法益 / 刑事法制史 / 刑事立法 / ドイツ刑法 / 比較刑事法 |
研究実績の概要 |
本研究は、基課題である「「社会の平穏を害する罪」の現代的再構築」(基盤C、課題番号16K03368)に基づいて、ドイツやオーストリアにおいて見られる「社会の平穏を害する罪」を、現代社会にふさわしい形で再構成し、日本での新たな立法提言の足掛かりとするために、とりわけドイツの刑法典各則第7章の「公共の秩序に対する犯罪行為」の章における犯罪類型について、ドイツで在外研究を行い、共同研究者であるドイツの大学教授との議論・検討を行うものである。 本来は令和2年度(2020年度)が本研究の最終年度として、平成31年度(2019年度)の在外研究の受け入れ先教員であったエアランゲン=ニュルンベルク大学のクリスチャン・イェーガー教授を日本に招いて講演を行っていただくなどの活動を予定していたが、コロナウイルスの影響により外国との往来がほぼ不可能になり、また研究代表者である野澤が先方に渡航して研究の仕上げを行うようなこともほぼできない状況に陥ってしまった。平成31年度の在外研究に基づく成果として、ドイツ刑法典各則第7章の「公共の秩序に対する犯罪行為」の中の、とりわけ脅迫態様による公共危険犯としての「犯罪の脅迫による公共の平穏の妨害罪」(ドイツ刑法126条)に関する論考(法政研究87巻3号F49頁-F63頁)を出すことができたものの、「国際共同研究」という意味でのドイツと日本の理論的交錯を行うという点では(コロナウイルスによる外在的な事情が要因とはいえ)不十分なものとなった。 令和3年度(2021年度)においても、コロナウイルスの影響等でほぼ「国際共同研究」としての成果を進めることができない状況であり、また年度末にはロシアによるウクライナ侵攻によってヨーロッパへの渡航も容易ではない状況が生まれつつあることから、イェーガー教授の論考などによる論文集の出版を成果とすることを検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、基課題を達成する目的で、比較対象となるドイツの各則規定の犯罪類型を分析・検討するために在外研究によって集中的に文献・資料収集を行いつつ、共同研究者であるドイツの大学教授との議論・検討を行うことをその内容としており、令和2年度が本来の研究の最終年度であったが、コロナウイルスの影響により外国との往来がほぼ不可能な状況に陥り、本来予定していたエアランゲン=ニュルンベルク大学のクリスチャン・イェーガー教授を日本に招いての講演等も困難となり、やむを得ず研究期間を1年延長した。 ドイツ刑法126条に関する論考を発表したことで、その限りにおいて「比較対象となるドイツの各則規定の犯罪類型を分析する」という当初の目的の部分については、きちんと進捗しているといえるが、「国際共同研究」という観点での展開が、令和3年度(2021年度)においても難しい状況にあり、令和2年度に引き続いて令和3年度も研究費を使うことなく、再度研究期間を1年延長せざるを得ない状況となった。 昨年度の段階で「次善の策」として検討しつつあった、イェーガー教授との論文集の出版を行うことによる「国際共同研究」としての成果を出すことが、現実味を帯びつつある状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
本来は令和2年度が本国際共同研究の最後の年度であったが、コロナウイルスの影響により「国際共同研究」としての具体的な活動に大きな制約がかかり、やむを得ず研究の終了年度を1年間延長することとなったが、この状況に変化がなく、やむを得ず再度研究の終了年度を1年間延長せざるを得ない結果となった。 本来は平成31年度の在外研究受け入れ先教員であるクリスチャン・イェーガー教授(エアランゲン=ニュルンベルク大学)を日本に招致して講演して頂く予定であったが、ただこれについては令和4年4月現在でもコロナウイルスおよびロシアのウクライナ侵攻によりドイツ・日本間の渡航が困難な状況にあり、場合によってはイェーガー教授との論文集の出版により代替する可能性も検討している。 また、もともとの研究目標として予定していた、「比較対象となるドイツの各則規定の犯罪類型を分析・検討すること」に関して、具体的な犯罪類型の分析については既に論考を公表したものの、その背景となる歴史的・法制史的観点からの分析・検討についてはさらなる論考を準備中であり、むしろこれをもって本研究の成果とすることも視野に入れつつある状況である。
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