研究課題/領域番号 |
17KK0052
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
永野 仁美 上智大学, 法学部, 教授 (60554459)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2022
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キーワード | 障害者雇用 / 福祉的就労 / 日仏比較 |
研究実績の概要 |
本研究は、フランスの社会法研究者とともに日仏の障害者雇用・福祉的就労に関する法制度、及び、その実際の状況を調査・研究することを目的とするものである。在外研究や現地調査は、2019年度中に終えている。 2021年度は、ボルドー大学比較労働法・社会保障法研究所(COMPTRASEC)の紀要に掲載する論文(Influences de la Convention relative aux droits des personnes handicapees sur le droit et les politiques pour les personnes en situation de handicap au Japon(伊奈川秀和との共著、近日公刊))を執筆する作業を行った。同論文は、日本における障害者政策を、とりわけ、障害者権利条約(2006年)が日本法に与えた影響の観点から紹介するものであり、特に、日本における障害者の定義、障害福祉サービス・障害者雇用・差別禁止の各仕組みについて詳述するものである。また、フランスでの障害者雇用・福祉的就労について、法制度とその実態とを日本に紹介するエッセイ(「フランスの障害者雇用・就労政策①~③」月間福祉105巻2~4号)、及び、フランスの障害者雇用政策において労働組合が果たす役割について紹介する論文(連合総研より近日公刊)も、執筆することができた。日本の取組みをフランスに紹介すると同時に、フランスの取組みを日本に紹介することで、日仏比較法研究の成果の一部を公表することができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた障害者雇用・就労に関する日仏シンポジウムは、コロナウイルスの影響から開催が困難となってしまった。しかし、2021年度は、上述の通り、フランス及び日本の双方において、それぞれの国の取組みをもう一方の国の研究者・関係者に紹介する論文・エッセイを執筆することができた。日仏比較法研究の成果を一部公表することができたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
日本と同様、雇用義務制度を有するフランスの障害者雇用・就労政策に対する関心は、日本においてかなり高い。フランスで行われた雇用義務制度に関する2018年法改正の影響が、実際の障害者雇用・就労の場にどのように生じているのか等について、今後も引き続き調査を行いたい。 また、フランスは、2021年に障害者権利委員会からの総括所見を受け取ったが、日本は、2022年の夏にこれを受け取る予定である。障害者権利委員会は、障害者を分離した上で就労の機会を提供する福祉的就労等に対しては、非常に否定的な見解を有している。その一方で、特に就労困難性が高い障害者を念頭に、福祉的就労の場の必要性や重要性が指摘されてもいる。障害者権利委員会の見解はもちろん重要であるが、就労困難性の高い障害者への就労機会の保障の在り方について、引き続き、日仏双方の法制度及び雇用・就労実態を調査することで、検討を深めたい。
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