本研究は領土海洋問題における裁判による紛争処理の機能と限界を探ることを目的にする。国際法に基づく個別紛争の解決をめざす裁判の機能の分析は文脈依存的となり、傾向を示唆するにとどまった。植民地主義を出自とする領域法分野においては、広義の住民問題が紛争解決における限界として浮上することが多い。海洋法分野においては、境界画定のようなゼロサムゲームにならない国際公益あるいは一般利益がかかわる点(たとえば国家管轄権外海域の扱い)や私人に委ねられた事業形態などは、国家対国家による紛争処理プロセスで扱われることは少ない。これらの限界を念頭に、領土海洋問題に関する裁判例への参照が行われなければならない。
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