研究課題/領域番号 |
17KK0060
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
竹澤 正哲 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (10583742)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 文化的集団淘汰 / 協力の進化 / 行動実験 |
研究実績の概要 |
人間社会は、社会的規範の存在によって特徴づけられるが、その存在を説明することは社会科学における重要な問いの一つであ る。近年、社会的規範の存在を遺伝子と文化の共進化/文化的集団淘汰といった枠組みによって説明しようとする試みが登場してきた。 だがその妥当性を実証ための試みは十分とは言えない。本研究の目的は、 大規模集団実験を中心として、マクロな観点から文化的集団淘汰の妥当性を検証するもので ある。文化的集団淘汰とは、行動形質の週宇陀内分散が小さく、一方で集団間分散が大きい時に、集団間競争と称される多様なプロセスによって、集団に利益をもたらす協力的な行動形質が、集団の境界を超えて拡散していくプロセスである。従来の研究では、この動的なプロセスを実証的に検証したものはなかった。本研究では、文化的集団淘汰の理論モデルを忠実に実験室内に再現した大規模集団実験を通して、この動的なプロセスが理論通りに人間の集団においても機能することを確認した。実験計画は渡航先の共同研究者と立て、実験は北海道大学社会科学実験研究センターの設備を利用して実施した。実験では概ね仮説通りの結果が得られた。また実験計画を検討している過程で、実験状況を厳密に再現した理論研究を実施する必要性が浮上したため、実験の計画・実施と合わせて、個人学習と社会学習の2つの能力を持つエージェントを想定した、新たなコンピュータ・シミュレーションをデザインし、実行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、文化的集団淘汰の理論モデルを忠実に実験室内に再現した大規模集団実験を通して、プライス方程式で表現される特定の条件下において、集団にとって利益をもたらす行動形質(社会規範)が集団の境界を超えて拡散していくことを実験によって直接的に検証し、ほぼ仮説通りの実験結果が得られた。またこの他に、Bret Beheim上席研究員と共に、集団間での文化的形質の拡散プロセスについて、多国間・多地域データを用いて分析するための、新たな統計手法を開発する研究も展開した。
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今後の研究の推進方策 |
集団実験の計画は渡航先の受け入れ研究者と共に行い、実験は北海道大学で実施した。その中で実験状況を再現した理論モデルによって、仮説検証を行う必要性が浮上し、コンピュータ・シミュレーションを開始したが、まだ終了しておらず、次年度に引き続き実施する予定である。
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