2022年度は、コロナ禍により延期していた韓国調査を実施したほか、これまでの研究成果をまとめる作業を行った。8月に行った現地調査では、釜山市にある「甘川文化マウル」に訪問し、マウル事業の担当者や住民へのヒヤリングを行った。コロナ禍に伴う観光客の激減により、協同組合事業の多くが赤字となり、事業規模の縮小や中止を余儀なくされるなど、多くの打撃を受けていることが分かった。また、社会的企業を支援する中間支援組織の関係者との話では、政権交代により、社会的経済関連政策の方向性が大きく変わり、その影響が徐々に関連企業の実績にも表れているとのことであった。コロナ禍と政権交代という外部環境の変化が韓国の社会的経済組織の経営に大きな影響を与えているが、いずれも現在進行中のものであり、その評価については、時間をかけて行うことが望ましいと思われるため、引き続き注視する必要がある。 研究期間全体を通じて、韓国における社会的経済組織に関連する制度・政策や経営実態について分析・考察することができた。まず制度・政策については、社会的企業育成法、協同組合基本法、社会的経済基本法(案)などの制定背景やその影響について、政策関係者、中間支援組織、企業経営者へのヒヤリング調査を通して明らかにすることができた。また社会的経済組織の経営実態については、認証社会的企業や協働組合の経営実績データを基に、当該組織の経営収支の経年変化や経営成果の影響要因に関する実証分析を行った。
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