本年度はコロナ禍のため、日本・オーストラリアとも大学でのデータ収集が行えなかった。そのため、主にバーチャルラボにおけるオンライン実験の実装と、クラウドソーシングによるパイロットテストを中心に行った。具体的には、複数名が同時に参加する経済ゲームを実装し、サーバにどの程度の負荷がかかるかを検証した。その結果、調査を含む実験全体をサーバに実装すると、予想外に負荷が高まることが判明した。サーバ負荷の軽減には、参加者募集の段階で参加人数に一定の制限を加えるとともに、ゲーム部分の実装と調査部分の実装を分けることが有効であることが示された。日本とオーストラリアの双方でオンラインでのデータ収集が可能なプラットフォームについても検討し、いくつかのサービスでの参加者募集の可能性について検討を行った。また、実行機能の概念的な位置づけについても再考し、領域横断的なコンポーネントの集合体として個々の能力を測定する従来型のアプローチとともに、目的に応じた認知や行動のチューニングのために必要なスキルセットを測定するアプローチの有効性を検討した。後者は昨年度作成した社会的ルールの切り替え能力を測定する課題と関連しており、所属コミュニティ数といった社会的な指標との関連を検証する上で、従来型のアプローチとスキルセット型のアプローチの両方を取り入れることの重要性が示された。データ収集フェーズでの諸問題の把握と、実行機能の概念と測定に関する理論的な展開が示されたことで、今後の研究実施に向けた課題が明確となった。
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