研究課題/領域番号 |
17KK0067
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
花薗 誠 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (60362406)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 調達入札 / 質評価 / 資産制約 |
研究実績の概要 |
第一に、基課題から継続している「総合評価方式入札の基礎研究」をほぼ完成させ、学術雑誌へ投稿準備を進めた。本研究は、多次元からなる費用パラメータ、多次元からなる品質評価項目、一般的な総合評価ルールを許容するため、理論と実証の両面で基礎となるものである。19年度の成果として、一般的な総合評価方式入札のモデルのパラメータ分布を識別するための条件(限界費用ベクトルの可逆性の条件)を拡張し整理した点をあげられる。 第二に、19年8月から本プロジェクトの研究目的の論点2「論点2:予算超過(cost overrun)の可能性が調達の経済性・競争性・質確保にどのような影響を与えるか」に関連し「調達におけるモラルハザードとアドヴァースセレクションの相互作用」について研究を進めており、以下のような予備的な成果を得た。調達において超過費用が確率的に発生することが見込まれる状況では、超過費用の予防や規模の縮小のための努力を引き出すこととが重要となる一方で、事前に行われる事業者選定プロセスで費用効率の高い事業者を選定することを、可能な範囲で両立させることも重要となる。もし、事業者には費用効率のほかに資産制約の面で異質性があり、超過費用の発生時に資産制約から事業が中止される恐れがあるとするなら、モラルハザードとアドバースセレクションの問題にある種のトレードオフがあることを見出した。具体的には、モラルハザードへの対処のためインセンティブ契約の締結が予期されると、入札において資産規模の小さい事業者が過度に入札額を下げる傾向があり、費用効率、倒産可能性の両面で悪影響を及ぼすことがわかった。 第三に、上記の研究の背景となる文献のレビューを行い、その内容を主に学生や一般向けに紹介する展望論文「公共調達-制度設計とその経済学的評価」としてまとめ「経済セミナー増刊 進化するビジネスの実証分析」に寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルス感染拡大の影響から、3月より在宅による研究となり、共同研究者とのコミュニケーションがオンラインで行われている。在宅による研究や、共同研究者によるオンライン講義の準備や実施など、予期しなかった状況による対応が必要となり、互いに善処しているものの研究のためのコミュニケーションの時間を縮小せざるを得なかった影響により、研究はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
資産制約による事業中止や倒産の可能性の大小は、事業者の「質」の一部であり、その質をどのように考慮し、コントロールするかという問題をより一般的にとらえる予定である。その際、基課題で研究した総合評価方式入札の知見や、いわゆるsecurities bid auctions(単なる価格を入札するのではなく、事後的に立証可能な指標(収入・費用など)に連動する証券を直接入札の対象にする入札方式)を考慮し、モラルハザードとアドヴァースセレクションの問題の相互作用をより深くとらえ、現実の制度の説明・設計へ向けての提言を行う。
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