研究実績の概要 |
基課題から継続している「総合評価方式入札の基礎研究」の内容を論文"Theory, Identification, and Estimation for Scoring Auction"(中林純、鶴岡昌徳、広瀬要輔との共同)にまとめ、学術雑誌に(再)投稿した。残念ながら結果は不採択となったが、研究内容の改善のため貴重なコメントが得られた。具体的には、費用関数のパラメータを推計するために企業数を用いる点など、これまでに得られた成果を補強・改善するための重要な指摘があった。コメントを参考にしつつ、研究結果を改善し次の投稿に向けて準備をしている。
また、昨年度から研究を継続している課題「調達におけるモラルハザードとアドヴァースセレクションの相互作用」について研究を進めており、以下のような成果を得た。まず、入札による事業者選定後のインセンティブ契約において用いられるインセンティブが「アメ(ボーナス)」の形式であっても「ムチ(ペナルティ)」の形式であっても、インセンティブの強さが同じならば、ナッシュ均衡において事業者選定やその後の努力行使が全く同じになるという同値性を発見した。また、その理由は、均衡入札価格がシフトして、均衡利得が不変になるように調整されるためであると解明した。ただし、資産制約が期末だけでなく期中にも課せられる場合には、事業者が期中に破産を避けるために入札を高め、破産による非効率性が下がることから、ムチよりもアメを用いることが望ましくなることがわかった。さらに、これまで得られた成果が頑健である点について確認し、成果に関する状態空間が二項的なケースのみならず連続的なケースでも議論が成立することなどを確認した。これらの成果は論文”Performance Pay in Procurement”としてまとめており、その内容について渡航先のオンラインワークショップで報告を行った。
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