昨年度前半は、気候変動分野における多中心的グローバル・ガバナンスについての論考が出版された。しかし、パンデミックの継続により海外渡航を行うことができなかったため、年度後半に海外渡航を行い、遅れていた研究を補完した。11月に赴いたオックスフォード大学では、新たな分野として、G20によるオーケストレーションの具体的形態であるengagement groupsについてD.Snidal教授とブレインストーミングした。また、一昨年から研究し始めた気候変動分野についても、気候変動枠組み条約のオーケストレーション・プラットフォームであるRace to Zeroキャンペーンの具体的な機能等についてT.Hale准教授と議論した。 他方で、腐敗防止におけるオーケストレーションについてもさらに研究を進め、12月に腐敗防止世界会議に出席し、Transparency International等の市民社会組織から情報収集した。さらに、腐敗防止の一分野である司法の廉潔性について、権威あるソフトローとして知られるバンガロール原則を主導したJudicial Integrity Group (JIG)のコーディネーターへの聞き取り調査を行った。その調査結果およびUNODCからの情報提供に基づき、司法の廉潔性分野でのオーケストレーションを分析し、昨年度行った学会報告を発展させ、グローバルガバナンスにおける自省的メカニズムとして一般化した。この成果を国際シンポジウム Global Governance in Complex Systems: Cases of Yuragi-led Transformations (名古屋、3月17-18日)にて報告した。また、この研究を踏まえて「グローバル・ガバナンスの自省作用による民主的変革」と題する新たな基盤研究を申請し、採択された。
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