研究課題/領域番号 |
17KK0071
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
税所 真也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (60785955)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2021
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キーワード | 成年後見の社会学 / 任意後見 / 法人後見 / 社会組織 / 家族規範 |
研究実績の概要 |
国内の成年後見制度の運用について,とりわけ,身上監護と生活支援の側面を,インタビュー調査を通じて明らかにすることが本研究の基課題であり,成年後見の社会学的な知見から中国の成年後見制度の現状と課題を分析し,国際研究として発展させることが,本研究課題の主たる目的である.昨年までの調査では,中国都市部を中心とする任意後見の利用事例の分析を通して,伝統的な家族規範のあり方や新たな家族の様態が見出されることを発見した.本年はそれらの研究成果を以下にまとめ,「成年後見制度と家族の再編――中日比較研究」張李風ほか編『少子高齢化社会と家庭――中日政策と実践比較』社会科学文献出版社(北京市)として公表した. 他方,昨年計画されていた中国内陸部での新たなフィールドワーク調査については,新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から,いちども実施することが許されなかった.この代わりとして,国内での任意後見の運用事例について,NPO法人を対象としたインタビュー調査を実施し,この研究成果を国際学会ISAフォーラム(世界社会学会議)で報告した.これにより,日本と中国以外の海外の社会学研究者のコメントから新たな視点を取り入れるなど,研究の方向性を拡げることになった.次年度も新型コロナウィルス感染症による渡航自粛が続いており,国内の任意後見NPO法人を分析対象の中心にする等,研究方針の軌道修正と研究手法の大幅な変更が必要になってきている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,これまでの中国でのフィールドワーク調査の結果を踏まえ,それを計画通り,中国の家族研究者に向けて書籍のかたちで公表することができた.これにより,日中間の学術・研究交流の推進という観点から,期待通りの成果をあげることができたと評価できる.残念だったのは,本来はこの業績をもとに中国内陸部でのさらなるインタビュー調査を実施していく計画だったが,これらについては新型コロナウィルス感染症による渡航自粛が続き,全面的に見送らざるを得なかったことである.同様に,また中国で任意後見に携わる研究者および実践家を日本に招き,国内の研究者・実践家との交流の場を設けるという計画も進めていたが,こちらについても中止せざるを得なかった.世界的な感染症の拡大は依然進行中であり,こうした計画については次年度も改善できる見込みは少ないと考えられる.次年度は,インタビュー調査の実施や対面での学術交流は控えることを前提として,ビデオ会議の実施,あるいは国内での調査に切り替えていくなど,当初の研究の方向性や研究手法の修正が求められている.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの世界的拡大により,2020年1月以降,現時点まで,海外の研究期間との国際共同研究は難しい状況が続いている.本研究課題の主軸である中国での継続的なフィールドワーク調査の継続は次年度も難しいことが予想される.こうした状況下では,従来の研究計画に対して,大幅な修正と変更が求められる.したがって,オンラインを通したビデオ会議の開催や国内調査で任意後見に取り組む実践家をおもな調査対象として加えるなど, 可能な限り代替的な手段を通じて本研究課題の遂行に取り組んでいく.
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