研究課題/領域番号 |
17KK0072
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
伊藤 恵子 中央大学, 商学部, 教授 (40353528)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 国際生産ネットワーク / 特許出願 / 技術領域 / 企業データ / 生産性 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
本研究では、OECDが作成する国際産業連関表を用いて、国際生産ネットワークにおける位置や重要性を示す指標を計測し、それと日本を含む主要国企業の技術水準や領域の変化との関係を定量的に分析する。日本企業については、基課題の研究において、国際生産ネットワーク内における相対的な位置が周縁部に移ったことが、外国の産業や企業からの技術スピルオーバーの低下を通じて、日本企業の特許出願に負の影響を及ぼしたことを示した。本研究では、他の主要国企業も分析に加え、各国産業の国際生産ネットワーク内での相対的位置と各国企業の技術力との関係を分析する。 当該年度(令和元年度)は、世界の特許データを収録したPATSTATデータベースと、OECD Patent Database 2019を利用して、世界各国の特許データを抽出、特許出願数や特許の質指標、国際共同出願・共同発明などのデータを整理した。また、OECDが作成する国際産業連関表を利用してグローバル・バリューチェーンに関する指標の作成なども行った。こうしたデータから、日本企業全体の特許出願数は減少傾向にあるものの、国際出願される特許の平均的な質は他国の出願特許と比べて顕著に低下しているとは言えなかった。しかし、ブレーク・スルー特許といえるような極めて引用数の多い特許の日本企業による出願は顕著に減少する傾向がみられ、特許の出願数や質と技術領域の変化が、企業のどのような属性変化によるものかをより深く分析していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年3月に共同研究者の在籍するフランスの経済協力開発機構(OECD)へ行き、その後1年間滞在して研究を実施する予定であったが、新型コロナウィルスの世界的流行により、渡航できない状態となっている。共同研究者も完全テレワークでオフィスに出勤できない状態が続いており、データサイズの大きい企業レベルのデータへのアクセスや分析に支障をきたしている。現在は、日本からも利用可能なデータを使って、日本でできる部分の研究・分析を進めているが、渡航可能になる時期について見通しが立たない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」にも述べたように、現在、海外渡航できない状態であり、共同研究者の所属する海外の研究機関に滞在して、共同研究者と緊密に協力しながら研究を進めることが難しい状況にある。そこで、研究代表者が日本で利用可能なデータを使って、日本でできる部分の研究・分析を進めていく。 一方、海外の共同研究者とは、これまで通り、主にメールを通じて、データセット構築や分析について随時相談ながら研究を遂行していく。ネットワーク指標の作成や主要国企業データの整理は、元OECD研究員で現在アメリカ合衆国ワシントンDCにある国際金融公社(世界銀行グループ)エコノミストのJonathan Timmis 氏と協力し、特許の特徴等に関する指標は、フランス銀行研究員のAntonin Bergeaud氏と協力して作成を進める。OECDシニアエコノミストのChiara Criscuolo氏とは、主に分析枠組の構築・修正と論文執筆面で協力を続けていく。メールやオンライン・ミーティングを活用しながら研究を進めていくものの、代表者が渡仏しOECDに滞在して研究を開始する時期の見通しが立たない。また、研究協力者もアメリカ合衆国とフランスに分散しており、各国の時差等もあるため、オンライン・ミーティングを頻繁には行えない状況にある。2020年の9月頃までには渡仏し、半年以上OECDでの研究を遂行する予定であるが、場合によっては、研究期間の延長を申請することも考えている。
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