本研究では、経済協力開発機構(OECD)が作成する国際産業連関表を用いて、国際生産ネットワークにおける位置や重要性を示す指標を計測し、それと日本を含む主要国企業の技術水準や領域の変化との関係を定量的に分析する。基課題の研究においては、日本企業に注目して、国際生産ネットワーク内における相対的な位置と特許出願数で測った技術力との関係を分析した。本研究では、他の主要国企業も加えて分析している。 本来、2020年度に共同研究者の所属するOECDに一年間滞在して研究を進める予定であった。しかし、パンデミックの中で欧州への渡航がかなわず、共同研究者とはオンラインで打合せをしながら国内で研究活動を行ってきた。2023年3月には、短期間であったが渡航し、共同研究者と分析内容や今後の方針について話し合うことができた。こうして、本研究の基課題における研究成果の改訂を重ね、2023年に査読付きの国際学術雑誌に掲載された。当該論文の改訂や拡張を行いながら、本研究課題を遂行した。 本研究では、OECDが作成して公開している特許の質指数や、国際産業連関表から作成したグローバル・バリューチェーンに関する指標等と、Orbis Intellectual Propertyデータベースとを接続し、グローバルな生産ネットワークのより中心に位置する産業に属する企業ほど、より質の高い特許や、より多様な技術分野にまたがった特許を出願している傾向を明らかにした。2023年度は、因果関係を考慮した分析を行うなど、分析方法の改善を重ねる一方、国内外の学会で活発に研究成果を報告し、学術雑誌への掲載に向けた改訂を行った。
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