研究課題/領域番号 |
17KK0074
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
神前 裕 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (80738469)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2021
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キーワード | 薬物依存 / 連合学習 / 道具的行動 / 条件性補償反応 / 負の強化 |
研究実績の概要 |
2020年度は国際共同研究先に渡航して計画していた研究を実施する予定であった。しかし新型コロナウィルス感染症により渡航が不可能となり、当初の研究計画遂行に支障が生じた。このため、一部研究計画を変更し、国内の所属機関にて実施可能な研究を遂行した。 薬物依存のメカニズムにおいて、繰り返し薬物を摂取した履歴のある環境では環境刺激が生活体に条件性の不快反応を引き起こし、これを解消するためにさらなる薬物摂取が生じるという負の強化メカニズムが提唱されてきた(e.g., Koob & Le Moal, 2008)。しかしこの条件性不快について、直接的な行動指標が存在しないことが当該の理論的問題についての検証を妨げてきた。この問題を解決するため、メタンフェタミンを用いたマウスの条件性場所選好課題において超音波発声を指標として計測した。この結果、超音波発声は、薬物摂取環境と同じ実験装置内であるが必ず生理食塩水と対呈示された区画において有意に増加していくことを発見した。メタンフェタミンが投与された区画では、メタンフェタミン投与日には発声が抑えられるものの、同区画で生理食塩水が投与されるとやはり高い頻度での超音波発声が見られた。 これらの結果は、これまで理論的に想定されてきた負の強化メカニズムについて、環境刺激に誘発される条件性不快反応の客観的な行動指標を提供するもので、極めて重要な発見である。現在この結果を論文として報告するために追加実験を行い、同時に原稿の執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、新型コロナウィルス感染症によって予定していた共同研究先への渡航ができなくなり、これによって当初の研究計画について遅れが生じた。しかしその代わりに、研究計画の中核となるアイデアに関して国内の現所属機関にて実施可能な研究を行い、当初の研究計画に関して極めて重要な知見を得ることがた。したがって全体としては研究目的について大きな進展があったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症の影響で当初の研究計画に遅れが出ているために、研究期間を1年延長した。2021年度も、共同研究先への渡航と渡航先での実験の実施が可能かどうか不透明な状況である。しかし昨年度、国内の現所属機関にて重要なデータを得ていることから、この知見をもとに共同研究先とメールやビデオ会議システムなどで相談をしながら、国内でのさらなる研究進展を目指す予定である。また状況が好転し渡航が可能であれば、渡航を行い研究を実施する予定である。
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