研究課題/領域番号 |
17KK0077
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
河上 哲 近畿大学, 経済学部, 教授 (60402674)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2021
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キーワード | 産業クラスター / 技術的近接性 / Product space / 経済複雑性 / ネットワーク分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、政策的に支援すべき産業クラスターがどの地域に、どのような産業からなる事業所で構成され、どこまでの地理的な範囲に形成されているのかを実証分析することを目的とする。事業所間の地理的な立地近接性だけでなく、事業所が有する知識・技術のネットワーク構造を踏まえた技術的近接性も考慮して、産業クラスターの構造・範囲を明らかにする。製品間の近接性ネットワークからなる製品空間を構築することにより、製品空間上をたどる知識スピルオーバーの経路や潜在的なイノベーションの可能性を解明する。 日本の基幹産業であり特徴的な集積形態が見られる自動車産業に分析の焦点を定め、研究初年度には、各自動車部品をネットワークのノードとし、技術的に類似する部品間をリンクで結ぶ製品空間を可視化して表現した。また、各部品に要する技術の洗練性(いかに多様でかつ稀少な知識・技術を要するのか)を複雑性指標として計測した。 研究2年度目は、製品空間の構造と各部品の洗練性との関連を、複雑ネットワーク分析の各種指標と複雑性指標を用いて探索的に検証したうえで、新しい部品の市場への出現と既存の製品空間との関連を計量経済学的に分析した。分析結果より、新しく市場へ現れる部品は、製品空間のコア部に位置する知識集約的な既存製品の技術と関連して創出されていることが判明した。また、一般に既存製品の洗練性は、新しい製品の出現には統計的有意に寄与しないものの、洗練性の大きい製品の出現に限っては、洗練性の大きい既存製品と関連して創出されていることが判明した。これらの分析結果は、自動車部品産業におけるイノベーションは、過去に蓄積された多様な知識・技術のもとに、それらが融合して経路依存的に創発していることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度は、自動車部品の一次(ティア1)サプライヤと自動車メーカーとの部品の納入及び調達関係を記録した公刊データを時系列に整備して、各部品をノードとし、部品間の類似性の程度をリンクの重みとした製品空間を、ネットワーク図として可視化して構築した。また整備したデータをもとに、各部品に要する技術の洗練性を複雑性指標として計測した。 研究2年度目は既存の製品空間からどのような部品が新しく創出され、またその結果として製品空間がどのように変容しているのかについて、動態的側面を考慮した分析を探索的に行うことができた。さらに、新しい部品が創出される確率が、既存の製品空間のネットワーク構造や製品の洗練性の程度に規定されることを、計量経済学的に検証することができた。さらに、イノベーションの地理的な側面を考慮する分析へ発展させるため、今年度利用したデータとは異なる公刊データを用いたデータベースの整備を予定していたが、長期の在外研究に伴い作業の進捗が遅れたため、本研究課題の研究期間の延長を申請し、当初申請時に計画していた範囲の分析に取り組む。 本年度の研究成果については、第33回 応用地域学会研究大会、及びノルウェー・スタヴァンゲルで開催された第5回Geography of Innovation Conferenceにおいて報告を行った。またオランダ・ユトレヒト大学の人文地理・空間計画学部で行われた研究セミナーでも報告し、所属研究者らと研究の発展可能性について意見交換を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に実施した、自動車部品産業における製品空間の構造と部品の洗練性との関連を検証した探索的分析、及びイノベーションの確率が製品空間のネットワーク構造に規定されることを実証した計量経済学的分析を合わせてワーキングペーパーとしてまとめ、国内外の査読学術誌に投稿する。 さらに、イノベーションの地理的な側面を考慮する分析へ発展させる。自動車部品産業に関する公刊データを活用し、主要な自動車部品がどこに立地する事業所で生産されているかを特定する。事業所の住所情報を利用することにより、製品間のネットワークで構成される製品空間が、どの地域に形成されているのかを分析する。考慮する地域の範囲は、各事業所の生産する製品に技術的に近接にある製品群の生産地点が、どれだけの地理的範囲に密度高く分布しているのかを地理情報システム(GIS)を用いて探索しながら設定する。地域に特有の製品空間から、どのような製品が新しく創出され、また製品空間が結果としてどのように変容しているのかについて、地域が有する知識・技術の異質性に着目して検証を行う。今年度までに利用したデータとは異なる公刊データを用いるため、自動車部品の種類や調査年次など、両データ間の整合性に留意を払いつつ、共同研究者や研究協力者と協働してデータベースの整備を進める予定である。
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