研究実績の概要 |
本研究では, 米国のサンアンドレアス断層および世界のプレート境界での繰り返し地震を調査し、プレート境界浅部での非地震性すべりの役割を調べる。本年度は8-9月に約2週間Geological Survey of Canadaに滞在し、Keling Wang博士と共同研究を行った。これにより、東北沖の地震波速度異方性に関する議論が発展し、共著論文を執筆し、現在査読中である。年末には、地球惑星科学に関する国際学会である、American Geophysical Unionの秋季大会に参加し、同研究に関する発表を行った。また、年度末の3月からはUniversity of California, Berkeleyへの滞在も開始する予定であったが、折からの新型コロナウィルス感染症の蔓延により、先方および所属大学側での渡航自粛要請があったため、渡航の延期を行い、日本での予備解析をおこなった。予備解析では、世界の地震観測網における地震間の波形相関データに、これまでに開発した地震の規模に応じた周波数帯を用いる方法を適用し、世界の繰り返し地震の予備的な抽出を開始した。また、南海トラフ(Uchida et al., EPSL, 2019)およびトルコアナトリア断層(Uchida et al., Tectonophysics, 2019)での地域の観測網による繰り返し地震の抽出やフィリピンレイテ島でのすすがき記録を用いた繰り返し地震の抽出(Fukushima et al., EPS, 2019)など東北地方以外の場所での繰り返し地震および非地震性すべり分布に関する研究を行い、今回行う世界の観測網を用いた繰り返し地震の抽出結果との比較に用いることができる基礎データを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では, 米国のサンアンドレアス断層および世界のプレート境界での繰り返し地震を調査する。2020年度は,夏以降に新型コロナウイルスの状況を見つつUniversity of California, Berkeleyへ渡航しての共同研究行う。また、東北沖における地震活動や繰り返し地震活動に関した研究をまとめ、共同でレビュー論文の作成も行う。サンアンドレアス断層の高精度の観測網のデータを用いた研究は、現地への渡航が実現したあと開始し, 東北で見られた周期的スロースリップや階層的地震分布,地震サイクルと微小地震活動の関係などを性質が異なるタイプ(=横ずれ断層帯)でどのように見られるかを検討する.世界の繰り返し地震の抽出では、抽出基準を確定させた後, 各地域での分布の特徴について調べる。University of Southern Californiaには, 全体の渡航計画が遅れているため, Berkeley滞在後に短期間の訪問を行うことで研究を進める。帰国後は,カリフォルニアおよび後半で述べた世界の繰り返し地震の両方を用い,地域により異なる地質・断層運動を活かした, 非地震性すべりや繰り返し地震の発生メカニズムの理解を進展させる。具体的には,世界の大地震の発生域や地殻変動データを用いたプレート間固着度推定と繰り返し地震・非地震性すべりの関係の調査やプレート境界付近の構造と固着の関係,プレート境界周囲の応力場や地震活動との関係の調査などを各領域での特性を比較しながら行う。
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