当該年度は、本研究課題による渡航に向けた準備として、基課題研究に関する次の研究を行った。一様等方計量が表す膨張・収縮する空間において、非線形のクライン・ゴルドン方程式、非線形波動方程式と非線形分散型方程式の導出について考察した。導出した方程式のエネルギー評価と初期値問題の適切性理論の構築を通して、空間の膨張と収縮の特徴について考察し、その効果の定式化に取り組んだ。エネルギー評価においては消散項に着目し、空間膨張が消散効果をどのように引き起こすかの解明に取り組んだ。また、分散型方程式については、時間変数の適当な変換により、変数係数の方程式を定数係数の方程式に変換する方法を示した。初期値問題においては、方程式の解の存在における非線形指数と計量の関係を明らかにした。また、方程式の解の漸近挙動が空間変動により、どのような影響を受けるかを考察した。方程式の導出において、ラグランジュ形式と非相対論的極限に基づいた系統的な手法を用いることで、上記の非線形偏微分方程式の統一的な導出方法の構成に取り組んだ。 線形評価において、空間の膨張が消散効果を生み出すことを定式化して明らかにした一方で、非線形評価に関して、エネルギー評価に基づく実解析的評価を構成し、線形評価と非線形評価を組み合わせることで初期値問題の適切性理論の構築に取り組んだ。また、ド・ジッター空間における半線形拡散方程式の漸近挙動について解析した。本研究の成果を論文として投稿し、研究経過を国際研究集会と国内研究集会において発表した。また、相対論に係る数学的研究を行っている海外研究者と国内研究者を招聘して研究集会を開催し、関連研究を調査すると共に、研究討論によって本研究課題の進展を図った。特に、本研究課題による滞在先である共同研究者を招聘し、研究討論を行った。
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