研究実績の概要 |
昨年に引き続き、ハートリー型クライン・ゴルドン方程式の解の振る舞いを考察した。べき乗型非線形項を持つクライン・ゴルドン方程式を、FLRW時空で考察し、その初期値問題の適切性理論構築に取り組んだ。特に、小振幅時間大域解と爆発解の存在条件の解明に取り組んだ。本研究の過程で、曲質量と呼ばれる空間の曲率から生じる質量項が、時空の最大存在時間より早い時刻で符号変化することが明らかになったため、その解析方法の構築について考察した。爆発解については、曲質量が虚数である場合でも爆発が起こり得ることが分かった。2023年7月にYagdjian と Galstian と共に、ブラジルにおいて国際研究集会を開催し、研究課題の動向調査と研究討論を行った。2023年8月に北京大学の先端研究者と共に大阪大学において国際研究集会を開催し、一般相対性理論に関わる非線形偏微分方程式論について、研究動向調査と研究討論を行った。昨年度に続き、本研究に関連する非線形波動・分散方程式について、2022年8月に早稲田大学で開催した国際研究集会のプロシーディングの発刊準備に取り組んだ。2024年3月に米国テキサス大学RGVの Karen Yagdjian, Anahit Galstian を訪問し、ド・ジッター時空においてヒッグス・ポテンシャルから生じる非線形項を持つ非線形クライン・ゴルドン方程式についての研究経過発表を行うと共に、共同研究について研究討論を行った。Yagdjianからは、非線形クライン・ゴルドン方程式の非相対論的極限として得られる非線形シュレディンガー方程式について、物理的に重要な研究方向性へのアドバイスを得た。コロナ禍による海外渡航状況の悪化で、当初予定した旅程の変更が必要となる一方、米国での物価高騰により、当初予定した滞在旅費が不足し、研究期間が結果的に180日未満となったが、研究は完了できた。
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