研究課題
本年度は、本申請課題で提案する2019年9月-2020年9月に開催される国際北極海観測”MOSAiC”プロジェクトの実現に向けて、その準備を着々と進める事ができた。MOSAiC観測の現場で必要となる全ての観測機材を手配する事からはじめた。具体的には、海氷下海洋境界層内の乱流熱フラックスを計測するための機材”渦相関フラックス計”の手配・開発にもっとも時間を要した。ここでは、既存の2種類のセンサー(流速と水温)を組み合わせて高頻度の同期観測を行うために、機器間の電力・メモリーの分配や回線経路についてメーカーを交えて入念に調整を行った。同時に、観測機器のテストおよび観測手順の訓練を行うため、オホーツク海の海氷フィールドを複数回にわたり訪問した。オホーツク海でのテスト・訓練は全て順調に終了し、良好なデータを取得する事ができた。オホーツクでの観測データに関しては、テストという位置付けのみならず、科学的にも価値のあるデータであり、今後、北極海との比較という角度も含めて、その解析を進めていく所存である。準備段階としては、MOSAiC本観測で使用する機材を船舶へ積み込むために、多くの物品を国際輸送にてドイツ・ブレーマーハーフェンに輸送するところまで完了した。本年度の科学面での成果としては、2013-2014年に西部北極海で取得された係留系のデータの解析を進め、国際誌に投稿し、一定の査読プロセスを受けた後に出版が受理された。ここでは、係留系最上部に設置されたに2種類の音響装置のデータを解析する事で、海氷の厚さや密接度、そして海洋上層の流動場に互いに高い相関がある事が見出された。特に、海氷直下の内部重力波の発生原因における海氷の漂流特性との関連については新しい知見を得る事ができた。
2: おおむね順調に進展している
上記で記述したように、観測機器の手配、調整、オホーツク海での実地訓練等を無事に完了する事ができた。また、機材を砕氷船への積み込みのためにドイツ・ブレーマーハーフェンの保税倉庫まで輸送し、すでに到着している。サイエンス面でも、国際誌より査読付き論文の出版が予定されており、本課題に密接に関連する過去の観測の成果をあげる事ができたことは、一定の評価に値すると考えている。
今後は、国際A科研プログラムの一環として、ドイツ・Alfred Wegener InstuteをはじめとしたMOSAiCプロジェクトに関連する欧州機関を訪問し、数ヶ月間滞在する予定である。滞在先では、本観測の準備を進めると同時に、現地の研究者と、観測の行程や段取り、観測後の解析の分担などについて綿密な打ち合わせを重ねる予定である。滞在中は、研究課題が申請当時の内容以上の発展性が得られるようにさらなる戦略を模索していきたいと考えている。
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Polar Science
巻: 未定 ページ: 1-9
https://doi.org/10.1016/j.polar.2019.01.004
Geophysical Research Letters
巻: 45 ページ: 1-9
https://doi.org/ 10.1029/2018GL079659