研究実績の概要 |
本年度は予定通りペリメータ研究所及びプリンストン高等研究所に渡航し,ペリメータ研究所のKevin Costello氏及びプリンストン高等研究所のEdward Witten氏と共同研究を行った.Costello氏,Witten氏及び筆者による共同研究の成果を"Gauge Theory and Integrability, I" ICCM Not. 6, 46-119 (2018) 及び"Gauge Theory and Integrability, II", ICCM Not. 6, 120-146 (2018) として学術雑誌に発表した. この二編の論文は合計で100ページにも達する長大なものであり,可積分格子模型,特にそのスペクトルパラメーターや可解性の起源についてこれまでとは全く異なったアプローチ(4次元チャーンサイモンズ理論からのアプローチ)を可能にした.この枠組みでは,摂動的な展開を持つ全ての可積分模型を統一的に理解することが可能になり,またなぜある種の模型が可解であるが,それ以外の模型は可解でないかの説明を与える.可積分系もスペクトルパラメーターの問題は,90年頃よりWittenによって提起された問題であり数十年来の歴史を持つが,その問いがCostello氏の論文および今回の結果で解決されることとなった. 現在はCostello氏と共同研究で,4次元チャーンサイモンズ理論からのアプローチを可積分場の理論に適用する研究を行なっている.そのうちの一編の論文はすでに完成しており,近日プレプリントサーバーに公開できる予定である. また,関連した研究,例えばaffine Gaudin model,thermodynamic Bethe ansatzについても検討を始めたほか,本研究の副産物としてチャーンサイモンず理論のT-dualityについての新たな単著論文"New T-duality for Chern-Simons Theory"をプレプリント arXiv:1904.04976 [hep-th] として発表した.
|