太陽系近傍において地球型系外惑星候補が発見されており、今後10年から20年においてその大気分光によって惑星の生命居住可能性や生命活動を示唆する分子の検出有無の検証が期待されている。 上記の背景に基づいて、地球型系外惑星候補の大気分光のために、精密な分光方式として瞳収縮分光器を提案し、その実証を進めている。本研究では、NASA Ames Research Centerと協力して、日本で開発された瞳収縮分光器とNASA Amesが開発した中間赤外線検出器を組み合わせて、波長8から11マイクロメートルにおける瞳収縮分光像の取得に成功した。また、取得された分光像に基づいて、分光器のパラメーター(波長分解能、波長帯域幅、サンプリング数)を推定した結果、設計値と非常によく一致していることが確認された。このように、世界で初めて中間赤外線領域における瞳収縮分光器の実証に成功した。さらに、取得された分光器の安定性を評価した結果、6時間にわたって、11 parts-per-million (ppm)に到達したことを確認した。また、この実験と並行して、中間赤外線検出器の単独の安定性も評価し、同様の精度まで到達していることが確認された。この結果は、Publication of Astronomical Society of Pacific(PASP)において出版された。世界で初めて実験において10ppmの安定性を示したことは、晩期から中期M型星周りでの地球型系外惑星の大気分光を可能とすることを示したものであり、一つの重要なマイルストーンを到達したことを意味する。 瞳収縮分光器はNASAが計画する将来の宇宙望遠鏡に搭載されるものであり、本実験結果は中間赤外線での地球型系外惑星候補の大気分光計画を推進するものである。
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