研究課題/領域番号 |
17KK0092
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
並木 敦子 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (20450653)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | マグマ / 粘弾性 / 溶岩流 / 気泡 |
研究実績の概要 |
玄武岩質マグマは、地球内部のマントルが部分熔融して最初に発生する地球上で最も普遍的に存在する重要なマグマである。本研究ではこの玄武岩質マグマの噴火メカニズムを明らかにする為に観測と気泡を含むマグマのレオロジーに立脚したモデルの提出を目指している。2019年度は3年計画の研究の2年目にあたる。当初本研究では、2018年夏にハワイ島キラウエア火山にある溶岩湖における脱ガスと脱ガスによる対流を観測し、そのモデル実験を2019年春にLamont-Doherty Earth Observatory(LDEO)にて行う予定であった。しかし、2018年5月にハワイ島ではlower East Rift Zone (LERZ)の噴火が発生し、溶岩湖はカルデラの形成と共に消えた。よって研究計画を変更し、2018年夏にはLERZの溶岩流を観測した。その結果、溶岩流にその流量の変化が多い時期とそうでない時期がある事がわかった。これには山頂のカルデラ断続的な沈降と熔岩中の気泡量の増減が関連していると考えられている。この観測計画の変更に伴い、LDEOで行う実験も溶岩湖から溶岩流のモデル実験へと変更した。2019年2月-5月の間、約3か月LDEOに滞在し、気泡を含む溶岩流の実験を行った。これまでに溶岩流のモデル実験は数多くあるが、マグマに含まれる気泡が溶岩流にどのように影響を与えるか明らかにしている実験はない。我々の実験の結果、気泡を含む流れの中で気泡が変形しない(キャピラリー数が1より小さい, Ca<1)場合には気泡はマグマの実質的粘性率を増加し、溶岩流の流速を遅くする。しかし、Ca>1の状況では、気泡はマグマの実質的粘性率を下げ、溶岩流が早くなり得る事がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では2020年3月-5月と7月-9月のトータル6か月間ドイツのGFZに滞在して研究したいと考えていた。これはハワイにおけるLERZ溶岩流の観測、LDEOでの溶岩流の実験に基づき、キラウエア火山山頂のカルデラ下のマグマ溜まりに蓄積していた気泡を含むマグマがLERZまで移動する過程とその時に形成するクラックの伝播およびクラック生成に伴う地震波の発生について実験的に研究する為である。しかし、ヨーロッパにおける新型コロナウィルス感染症流行によって滞在の継続が難しくなり、計画を変更して2020年3月19日に帰国した。よって、ドイツで行う予定であった実験は現在中断しており、再開の目途はたっていない。
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今後の研究の推進方策 |
本来であれば、ドイツのGFZに滞在して山体下をマグマが進む過程の実験を行う予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染症が収束するまではドイツへの渡航が不可能であり、研究は再開できない。よって計画を変更し、ハワイ滞在中にサンプリングしたLERZ噴火の噴出物の解析、およびLDEOにおいて行った気泡を含む溶岩流の実験に関して理論的に考察する事を検討している。一方、GFZでの実験については、今年度中にドイツへ渡航する事が難しい場合には、計画を1年延長し、来年度に渡航して実験を再開したいと考えている。
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