本研究は当初以下の3つのパートを計画していた。(1)ハワイ島における噴火の観測、(2)Lamont-Doherty Earth Observatory(LDEO)における気泡を含む溶岩流の実験、(3)GFZ-Potsdamにおける地殻中のマグマ上昇の研究。 (1)については2018年にハワイへ渡航し、この年に起こったLower East Rift Zoneの噴火を観察する貴重な機会に恵まれた。この噴火で観測された溶岩噴泉の赤外画像から、火山ガスの急膨張による温度低下がマグマの表面を冷やす事で破砕が起こりうる事を見積もった。この結果は2021年にNature Geoscienceに出版し、完了した。 (2)については2019年にLDEOを訪問し、気泡を含む溶岩流の実験を行った。(1)で観察した溶岩は気泡の体積分率が高く、この状況を模した実験とした。帰国後に実験結果の解析を行い、論文としてまとめ、2022年に出版し、完了した。 (3)については、2020年3月に、実験の為ドイツに行ったが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により緊急帰国した。その後、実験を再開するのが難しかった為、この分野の基礎的な概念をまとめたレビュー論文を共著で執筆し、Nature Reviews に掲載した。 以上のように研究が進んだため、これらの結果に基づき結晶を含むマグマの挙動の懸濁液的な振る舞いの理解を進める為、2022年度はUC Santabarbaraにおいて行われたKITP Program: Multiphase Flows in Geophysics and the Environmentに参加し、懸濁液的な性質を持つマグマの研究を行った。2023年度はこの研究を論文としてまとめ投稿した。
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