研究実績の概要 |
Hamilton-Jacobi(HJ)方程式や幾何学流に現れる非線形偏微分方程式について,粘性解理論,弱KAM理論を発展させて,「退化粘性HJ方程式の力学的構造」の理解を目指す.具体的には,HJ方程式の特異極限の一つである均質化問題の解の収束率と,解の長時間後の挙動について解明することを目的とする.HJ方程式の均質化問題は,1987年にLions, Papanicolaou, Varadhanによる有名な未発表論文により提唱された後,劇的に研究が進展した.しかし,PDE的手法だけでは収束率やその最適性について解析することは難しく,長らく案件とされてきた.2018年度から2019年度にかけて,Yifeng Yu教授(カリフォルニア大学アーバイン校)とHung V. Tran准教授(ウィスコンシン大学マディソン校)と共にAubry-Mather理論の観点から問題を見直すして一部最適な収束率を得た.次に,退化粘性HJ方程式の解の長時間挙動の研究については,長時間後に定常問題のある解に収束することが知られていた.しかし,対応する定常問題の解の多重性から,どの解が選択されるかについては,未解決であった.この点について,退化粘性HJ方程式の背景にある,確率ハミルトン系を取り扱えるよう,弱KAM理論を一般化をして,長時間後のプロファイルに応用できるかについて解明する計画である.
以上を目的として,受け入れ先のYu教授と連絡を取りながら,取り組んでいる.訪問については,計画通り2019年9月にYu教授を訪問して,上記の内容について討論した.一方,2020年3月も同氏を訪問する予定でいたが,新型コロナウィルスの流行によりキャンセルした.さらに,2020年7月から2021年3月まで訪問を計画していたが,米国本土における新型コロナウィルスの流行状況に応じて,延期する可能性を検討中である.
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