研究課題/領域番号 |
17KK0094
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
李 聖林 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (50620069)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | パターン形成 / 細胞極性 |
研究実績の概要 |
非対称細胞分裂は初期発生段階で細胞の多様性を作り出す極めて重要な仕組みの一つである。そして非対称細胞分裂の根本となるプロセスの一つが細胞極性である。線虫の初期胚の母細胞は自分の持つ様々な物質を左右非対称に分布させ、二つの娘細胞にそれぞれ異なる物質を分配することで異なった機能を持つ二つの娘細胞を作り出す。その際、細胞膜で形成されるPAR極性は非対称分裂のプロセス全体において極めて重要な役割を果たす。 PAR極性プロセスは極性パターンが形成されるフェーズ(Establishment Phase)と極性パターンが維持されるフェーズ(Maintenance Phase)として大きく2つに分けられる。Establihsment phaseについては今まで多く研究されてきたが、極性パターンが維持されるMaintenance Phaseにおいてはその仕組みについて明確な答えがなく、長い間謎に残されていた。そこでイギリスのOxford大学のE. Gaffney氏とアメリカのOhio State 大学のA. Dawes氏と協働し、PAR極性の維持にDCD-42が極めて重要に関わっていることを突き止めることに成功した。本研究成果は、現在論文として作成中であり、近日中に国際専門誌に投稿を予定している。
そのほか、細胞同士が直接に接触しお互いの機能を制御するNotch シグナルにおいて、今までさほど注目されていなかった細胞の時間的制御の観点からNotch シグナルの研究を進めた。時間制御を含むNotchシグナル伝達がパターン形成に及ぼす影響についてもOxford大学の博士研究員であるL. Brown氏とも共同研究を進めており、細胞内の遺伝子発現における時間スケールと細胞分裂の時間スケールが共に細胞間のシグナル伝達動態に及ぼす影響について結果を得られ、現在、議論を重ねながら論文作成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
3ヶ月ほどの滞在で、イギリスだけではなく、アメリカの研究者とも共同研究を進めることができて、その成果を論文としてまとめている点、そして、一つの研究だけではなく、現在、他の共同研究へさらに発展させている点で当初の計画以上に進んでいる。さらに、当初の研究計画にはなかった医学系との融合研究を始めるきっかけを形成できて、さらに国際共同研究の幅を広げるようになった。また、研究面だけではなく、研究連携においても積極的に協働していくことを具体的に話し合っており、研究活動においても当初の計画以上の成果がほぼ確実に見込まれている。具体的には、来年度と再来年度に国際研究会を企画しており、パターン形成分野におけるアメリカーイギリスー日本の研究連携を一層強めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初、2020年4月から8月までさらにイギリスに滞在しながら、共同研究を進める予定でいたが、現在コロナウィルスによる渡航禁止装置によって、日本に留まっている。しかしながら、引き続き、Oxford大学の訪問研究員として籍をおいており、Onlineを通じて、セミナーや共同研究を進めている状況である。 また、Oxford大学医学部の研究者とも共同研究のきっかけを掴み、研究連携を強めているので、日本にいても引き続き、共同研究を進めていく計画である。
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