研究実績の概要 |
対流圏と海洋間の相互作用現象であるエルニーニョ・南方振動(ENSO)が、高度100kmから1000kmにわたる超高層大気領域(熱圏・電離圏)にまで影響を及ぼしていることが長期間の衛星観測から見出され(Liu, 2016)、重要な関心を呼ぶ研究テーマとなっている。本研究はそのテリコネクションのメカニズムを解明する。基課題の進展によって、大気潮汐波がその繋がりを果たしていることがわかった(Liu et al., 2017)。本国際共同研究では、それを発展し、ENSO期間中降雨による水蒸気変化に伴う放射熱と潜熱変動を数値シミュレーションで定量化し、大気潮汐波を変動させる原因に迫る。この課題を解明することにより、エルニーニョ気候変動における海面から超高層までの結合過程が明らかになり、なおかつ、電離圏の宇宙天気予測の向上と大気上下結合研究全体の新しい展開が期待される。 本年度は、GAIAモデルを用いたエルニーニョの数値シミュレーション結果から、水蒸気による潜熱と放射熱を計算した。これらの物理量の平常時からの変化を定量化することで、下部熱圏領域の大気潮汐変化の寄与を定量的に評価することができた。
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