カナダ オンタリオ大のShantanu Basu教授との共同研究で、磁場とその散逸を考慮して、原始星形成後の長時間進化の計算を行った。Basu教授は星間磁場と理論星形成研究分野の第一人者である。この研究では世界で初めて原始星を空間的に分解して、原始星形成後2000年という長時間の数値シミュレーションを可能にした。その結果、星周円盤の成長、アウトフローとジェットの駆動を再現することが出来た。 原始星誕生後、原始星前に形成していたファーストコアの圧力が弱まり収縮を始める。ファーストコアはやがて回転で支えられる星周円盤となる。星周円盤の領域は磁場の散逸が効率的であり有効な角運動量輸送過程が存在しない。そのため、時間と共に円盤質量は増大し最終的には重力不安定によって渦状碗が発達する。渦状碗が発達すると非軸対称重力トルクによって角運動量が効率的に輸送され円盤ガスが中心星へと落下する。落下しているガスの一部が円盤の内縁と原始星をつなぐ磁場との作用によってジェットとして駆動する。その後、円盤ガスが中心星に落下するため、円盤は一時的に軽くなるが、やがて再び重くなり重力不安定が起こり効率的にガスが中心星に落下する。このようにして非定常ジェットが現れる。 この研究では観測で良く見られる非定常ジェットは、原始星周囲の円盤の重力不安定性と密接に関連していることを示した。また、観測で見られるアウトフローのキャビティや非定常ジェットによって形成されるノット構造なども再現することが出来た。
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