研究課題
広大な宇宙において、生命を有するのは地球だけだろうか?初期地球にもたらされた水・有機物といった始原物質を調査するため、惑星科学分野では2018年には日本とアメリカの小惑星探査機はやぶさ2、OSIRIS-RExがそれぞれ目標の小惑星に到着し、2019年度には、はやぶさ2は衝突実験と2回目の着陸・試料採取に成功した。一方、天文学分野では太陽系外惑星の検出数がここ数年で爆発的に増加しており、地球と類似した環境を持つ可能性のある惑星も複数発見されている。本研究では水素・酸素原子の観測による系外惑星環境の研究を発展させ、惑星科学分野と天文学分野で独立に進められてきた研究を統合し、国際共同研究によって太陽系外地球型惑星の水環境進化の研究を進め、地球外生命誕生・進化の可能性に迫ることを目的としている。そのためにドイツ・フランス・アメリカとの共同研究により初期地球への水の供給源である小惑星の含水量推定に向け、はやぶさ2、OSIRIS-RExによる小惑星探査を中心として研究を進めた。はやぶさ2の探査対象である小惑星「リュウグウ」、OSIRIS-RExの対象である「Bennu」の両方で含水鉱物が検出されており、2019年度には、はやぶさ2搭載観測装置ONC-Tによる含水鉱物吸収の探索を進めた。また、ロシア・スイスとの共同研究により強紫外線環境における地球型惑星大気進化と現在の系外惑星大気の観測手法の検討を進め、ロシアが開発中の大型紫外線型望遠鏡WSO-UVへの系外惑星観測用高感度紫外線分光器の搭載を目指し活動を行ってきた。2019年度に進めた協議の結果、WSO-UVプロジェクト側は日本が提供する紫外線分光器WSO-UVの受入を基本方針として設計を進めており、2020年1月には日本の装置の形状と開発スケジュールを確認し、JAXA-ROSOCOSMOS間の協定締結に向けて活動を続けている。
1: 当初の計画以上に進展している
ロシアWSO-UVへの紫外線分光装置搭載が本研究の主目的であり、新型の高感度分光器の技術開発を進めつつ、装置設計の検討を行った結果、日本の装置提供を前提とした設計が進められており、JAXA-ROSCOSMOS間の協定締結に向けた活動が始められている。また、JAXAに設立された系外惑星紫外分光WGはJAXA内の計画検討チームに移行する方向で検討されており、想定以上に進展していると言える。また、紫外線観測に関する海外共同研究者との共著論文も発行されている。さらに、はやぶさ2の小型分離機に関し、共著者として参加した国際共著論文がScience誌に受理された。
日本から提供する紫外線分光器UVSPEXの基本設計を進め、装置開発に着手する。また、この装置で得られる観測結果の解釈に有用となる、地球型惑星高層大気モデルの構築を進め、国際共著論文としてまとめる。さらなる将来計画であるLUVOIRといった2030年代の宇宙望遠鏡計画への参入につなげるため、より大型の検出器の開発も並行して進める。はやぶさ2で開発を進めた可視分光カメラによる含水鉱物吸収分布の観測結果に関する研究を進め、近赤外分光装置の結果と合わせて論文に纏める。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 8件、 査読あり 10件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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