研究課題/領域番号 |
17KK0100
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
久保 毅幸 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (30712666)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 加速器 / 超伝導 / 超伝導共振器 / 薄膜 / 表面抵抗 / Q値 |
研究実績の概要 |
ニオブ製超伝導加速空洞の加速電場は限界に達しつつあり、次世代空洞開発が急務である。そこで超伝導積層薄膜構造が注目されている。最適膜厚の存在が理論的に示されて以降、世界中の加速器研究所及び大学が世界初の実証実験に向けて競争を加速させている。本国際共同研究では、積層薄膜構造における表面抵抗のマイクロ波磁場強度依存を理論的に定式化し、実験で得られる表面抵抗のデータと比較する。解析結果を実験と理論両方にフィードバックする事で積層薄膜構造における表面抵抗の理解を大きく前進させ、高加速勾配かつ低損失な積層薄膜構造による次世代空洞の基礎を確立する事が目的である。これは将来の加速器計画の建設費及び維持費の大幅な軽減につながる。 1年目と2年目にかけて、研究代表者と海外共同研究者は、交流電流下の超伝導体の準粒子の分布関数がフェルミ・ディラック(FD)分布から大きくずれる条件を調べた。超伝導空洞の運転条件や空洞材料を考えた場合にはFD分布と見做して良い場合が少なくない。そこで、我々はまずFD分布を用い、超伝導積層薄膜が強いマイクロ波下にある場合の表面抵抗を調べた。マイクロ波電流による準粒子状態密度のピーク幅の拡大によりマイクロ波磁場強度の増大とともに表面抵抗が減少し、更に強度が増すとギャップの縮小の寄与が支配的となって表面抵抗が増大に転ずる。これに積層薄膜構造特有の遮蔽電流抑制効果が加わると、表面抵抗が増大に転ずる磁場強度がシフトする事を明らかにした。 ここで得られた手法を応用し、帰国後、対破壊電流以下の任意の直流電流でバイアスされた超伝導共振器に弱いマイクロ波が印加されている場合の表面抵抗のバイアス電流依存を調べた。非バイアス下の状態密度のピークの幅に応じて、適切なバイアス電流をかけることで、表面抵抗を最小化できることを示した。 これらの結果は積層薄膜構造の表面抵抗のデータ解析に役立つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目と2年目で、超伝導積層薄膜構造における表面抵抗のマイクロ波磁場強度依存の理論的理解を大きく前進させる事ができた。更に帰国後は、対破壊電流以下の任意の直流電流バイアス下での表面抵抗の理論を構築した。これらの理論は実験データを解析する際に非常に有用であり、実験データの解析へと進む準備が着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
構築した理論を用いて、実験データの解析へと進みたい。分布関数が平衡から大きくずれる条件下(低温・高周波数)での表面抵抗のマイクロ波磁場強度依存は、まだ課題として残ったままであるが、これについては引き続き理論研究を進める。また、不純物を多く含む場合の超伝導積層薄膜構造のミクロな理論に基づく最適化も課題として残っている。
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