研究課題/領域番号 |
17KK0104
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
新井 亮一 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (50344023)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | タンパク質複合体 / タンパク質ナノブロック / 人工タンパク質デザイン / タンパク質結晶化 / 多孔質ナノマテリアル / 計算科学 / 機能性超分子 |
研究実績の概要 |
これまでの科研費基課題では、独自の4本ヘリックスバンドル二量体人工蛋白質WA20を応用した蛋白質ナノブロック戦略の高度化として、温度変化プログラミングによる蛋白質ナノブロックの逐次的自己組織化によって超分子複合体構造を構築する研究を進めてきた。その成果を基に本課題の国際共同研究では、計算科学も取り入れて研究を発展させ、人工蛋白質複合体の結晶性ナノ材料を開発することを目的とした。 そこで、2019年3月31日に渡米し、University of Washington, Institute for Protein Design, Baker研究室で、計算機・実験設備やサポートスタッフが充実し、世界から優れた研究者・学生が集っている世界最高レベルの研究環境を活かして、人工蛋白質設計による超分子結晶ナノ材料開発に関する国際共同研究を実施し、2019年9月30日に日本に帰国した。 具体的には、蛋白質デザインプログラムRosettaを利用して、2次元シート状結晶性ナノ材料を構成する対称性を考慮して、多量体形成αヘリックス蛋白質を連結する人工蛋白質構造デザイン計算を行った。約1200の人工蛋白質計算結果から、相互作用面の形状やスコア等、様々な条件により絞り込み、最終的に約20種類の人工設計蛋白質を選抜した。それらの人工遺伝子を合成し、大腸菌によりsfGFP融合蛋白質として発現させた。良好な発現が見られた試料についてHis-tag精製し、ネガティブ染色電子顕微鏡観察により、ナノスケールの構造を調べた。いくつかの試料では蛋白質複合体の集合とみられる凝集体が観察されたが、当初設計したような対称性の2次元シート状構造を観察することはできなかった。そこで、これらの結果をフィードバックして、さらに改良するために再設計を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに2019年3月31日に渡米し、University of Washington, Institute for Protein Design, Baker研究室で、上述のように国際共同研究を実施し、2019年9月30日に日本に帰国した。ここには高度な計算機クラスターや実験の設備があり、サポート体制が充実し、さらに世界から優れた研究者・学生が集っている世界最高レベルの研究環境のもとで、日本にいるときよりも、自分自身が研究に集中できる状況で研究を進めることができ、非常に貴重な経験を積むことができた。また、蛋白質デザインプログラム計算などについてもある程度習得し、今後、本研究課題のみならず、様々な研究に活かすことができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度前半の半年間(4月~9月)は、上述のように海外共同研究先に滞在し、世界最高レベルの人工蛋白質デザイン研究環境を活かして、人工蛋白質設計による超分子結晶ナノ材料開発に関する国際共同研究を実施し、2019年9月30日に帰国した。ここで得られた結果を基に、今後、さらに改良するために人工蛋白質を再度設計し、国内の当研究室の学生(研究協力者)と一緒に実験を計画して、引き続き発展的研究を進めていく予定である。 ただし、昨今の新型コロナウイルスの影響により、次年度(2020年度)の夏休み(7月~9月)に当初計画していた海外共同研究先(米国)への渡航は、やむを得ず断念することにした。しかし、オンラインにより、随時、連絡を取ることは可能であり、その影響は最小限に留められると考えられる。また、他の科研費課題と共用で購入したクロマトグラフィーシステムや蛋白質設計用Linuxコンピューターの導入により、国内の当研究室での研究環境も以前よりも向上しており、今後の成果につながることが期待される。
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