これまでの蛋白質ナノブロック研究の成果を基に、本課題の国際共同研究では、計算科学を取り入れて研究をさらに発展させ、人工蛋白質複合体を規則的に集積させた結晶性ナノ材料を開発することを目的とした。 そこで、2019年度前期に半年間渡米し、ワシントン大学のBaker研究室で、計算機及び実験設備やサポートが充実した世界最高レベルの研究環境を活かして、人工蛋白質設計による超分子結晶ナノ材料開発に関する国際共同研究を実施した。蛋白質デザインプログラムRosetta等を利用して、2次元シート状結晶性ナノ材料を構成する複合体形成αヘリックスドメインを対称的に連結した人工蛋白質を設計した。計算結果から、相互作用面の形状やスコア等の条件により2次元格子状複合体のデザイン構造を絞り込み、実際に実験する人工設計蛋白質配列を選抜した。これらの人工遺伝子を合成し、大腸菌により発現し、精製後、電子顕微鏡観察により、ナノスケールの構造を調査した。いくつかの試料では蛋白質複合体の集合とみられる凝集体が観察されたが、当初設計したような対称性の2次元シート状構造は見られなかった。これらの結果を踏まえながら、その後、さまざまな人工蛋白質の設計開発及び改良等にも取り組んできた。 また、2020年度~2022年度の夏期にも、再度1~2か月間渡米し、同研究室に滞在して共同研究を実施することを計画していたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による海外出張の自粛等により断念した。そこで、日本国内の研究室で計算及び実験ができるように必要な研究環境の整備を行って研究を進めてきた。関連研究として、金属イオンに応答して会合する人工蛋白質ナノ粒子複合体の研究や新規人工酵素の立体構造解析に関する研究にも取り組んで、研究成果を論文として発表した。
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