スイス連邦工科大学(ETH)チューリッヒ校のPeter Johann Walde教授は、高分子鎖に酵素を付加させることで、酵素同士を近接させることで酵素反応効率が増大する。コロナ禍で十分な期間、ETHで実験が出来なかったが、先方に合成して頂いた試薬を用い、日本で実験を行った。また、オンラインにおいてミーティングをおこない、渡航期間が180日未満であったが研究を遂行できた。この研究から着想し、高分子鎖に酵素の付加は化学的な結合であるため、自由に酵素の近接と解離の制御を行うことが難しい。したがって、酵素反応のON/OFFの制御は困難である。したがって、酵素の近接にDNAのハイブリダイゼーションを用いることで、酵素の近接と解離の制御が可能になる。そこで、3種類の酵素に異なる配列の一本鎖DNAを2本以上付加させることで、酵素複合体体がネットワーク化する。また、相補配列のmiRNAを加えると、DNA同士の結合が外れ、酵素同士が解離する。この様子を動的光散乱法と透過型電子顕微鏡で観察を行った。そして、miRNAを加えると酵素ネットワークが解離するため、酵素カスケード反応による産生量が低かった。その溶液にRNaseを加えると動的光散乱法でサイズ増大が観察され、酵素カスケード反応による産生量も増加した。したがって、DNAのハイブリダイゼーションを用いることで、酵素カスケード反応のON/OFFの制御に成功した。
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