本研究では,ナナフシの神経生理学的,動物行動学的研究,ならびにその知見を用いたモデル化,ロボットへの適用に関して高い業績を上げている研究機関であるBielefeld大学 (独)において,申請者が提唱している「運動へのシステム工学的介入による生物の適応メカニズムの解明」というアプローチを発展させる.具体的には,昆虫自身の感覚運動機能を残存させた状態で,筋への電気刺激により,脚の運動をハッキングする方法論(Motion Hacking法)を確立し,介入者の意図どおりに脚の運動を変化させたときの昆虫自身の神経系による脚間協調過程を観察することで,その背後に隠れた「ロジック」を明らかにする.
Motion Hacking法確立のため,申請者が主として筋への電気刺激装置の開発を担当する.Volker Dur教授(海外共同研究者 )からは,対象昆虫(ナナフシ)の行動神経学的知見に基づき,同刺激装置を用いた筋への刺激法(電極の位置,太さなど)を 検討し助言をいただき,試行錯誤を通して筋の選択的制御法を確立するための実験を共同で行う. Volker Dur教授は,生物学,計算論的神経動物行動学を専門とする研究者であり,昆虫(ナナフシ)の適応的な移動能力の解明を目指した研究を行っている.特に,動物行動学,電気生理学,数理でもリング,ロボットへの実装という多角的手法をベースに,さまざまな分野の研究者との学際的な研究を精力的に遂行しており,海外共同研究者として適任である.
|