研究課題/領域番号 |
17KK0111
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
赤坂 大樹 東京工業大学, 工学院, 准教授 (80500983)
|
研究期間 (年度) |
2018 – 2022
|
キーワード | ダイヤモンド状炭素膜 / 炭素 / PEEM / NEXAFS / sp2結合 / sp3結合 |
研究実績の概要 |
ダイヤモンド状炭素(DLC)膜のsp2/sp3結合炭素比と耐熱性の関係を明らかとし,局所的な熱分解過程をタイの放射光施設(SLRI)との国際共同研究により明らかとする事を目的とし2020年度に引続き研究を実施した.2019年度からの世界的なコロナ感染拡大により,タイ―日本の渡航制限により,予定していたDLC膜の局所加熱によるsp2/sp3結合炭素の変化を評価するため,Nd:YAGレーザー(1064 nm)を照射したDLC膜の照射痕内のsp2/sp3結合炭素の分布およびレーザー強度依存性についてのSLRIでのX線吸収微細構造(NEXAFS)に併設した光電子顕微鏡(PEEM)を用いた炭素のk端付近(284 eV)のX線を照射時の光電子の2次元分布像を観察による最後の1種類の試料の構造評価は今年度も実施できなかった. この為,2021年度はこれ迄に得られているデータをRAと共にデータを精査し,国際会議への投稿および論文誌への掲載準備を行った.2020年度に引き続き,得られた結果を公表していくことに重点を於き,プロジェクトを進めた.2022年に1月頃より日本政府としての海外への渡航およびタイ側の入国待機時間の廃止等から,2022年度の実験準備を開始し,試料の作製等を行った.この状況に基づき,本プロジェクトは2年目の延長を申請し,2019年末に予定していた1種類のsp2/sp3結合炭素の局所変化と熱量の関係および局所加熱時の熱による影響の把握を2022年11月ごろに実施する予定である.この結果得られるデータからDLC膜の炭素の結合状態の変化領域等を明らかにできる見込みを得ており,これらを進め,DLC膜の摺動等の他の熱関係現象についても炭素の結合状態変化を捉える予定でSLRIと協働予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年度より引続き,世界的なコロナ感染拡大により,タイ政府が日本人の渡航を制限した上にタイ国内をロックアウトしたこと,更には日本政府も国外からの入国者に対して制限を設けたため,研究者の国際的な行き来が難しくなった.所属研究機関の海外渡航自粛の方針もあって2019年度より,本研究実施者の途中帰国中にタイ国へ入れていない.最後のSLRI滞在での2020年1月~3月までのタイ放射光研究所(SLRI)での放射光を用いた測定を含む,研究がペンディングとなっており,現在,これら渡航の制限が解かれるのを待っている状況である. 当初予定していた日本でのDLC膜試料の作製とSLRIでの測定という,相互往来による研究の効率的な運用が裏目に出ており,実験的な研究は遅れているが,ZOOMを使った研究打ち合わせ等により,国際会議・論文投稿等できることを2021年度も実施した.この為,本プロジェクトは更に1年の延長を申請し,2020年1月~3月の滞在分のマシンタイムSLRI側が確保してくれており,コロナ感染が収束して両国間の検疫の緩和がなされ次第,渡航して,測定予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトは更に2023年3月までの1年の延長を申請しており,この延長を使い,両国の入国制限が解除され次第,放射光施設でのPEEM測定などの実験の続きから始める予定である.SLRIに2019年度に作製した13Cや重水素などの同位体を含むDLC膜の局所加熱した試料をタイ放射光研究所(SLRI)に持ち込み,2020年1~3月分の放射光施設のマシンタイムを使いsp2/sp3結合炭素の局所変化と熱量の関係および局所加熱時の熱による影響範囲を把握し,熱量による影響度の違いや炭素の結合状態の変化領域などを明らかとする.これらは現在の所2022年11月頃を見込んでいる.更にこれらの結果を基に,DLC膜の反応メカニズムについてSLRIの研究者と共同で公表すると同時に耐熱性向上のための指針を示す.
|