研究実績の概要 |
電磁研究では一般に「周波数が固定された場合の各材料の振舞いは常に一定」と理解されてきた。これに対し、2013年末研究代表者は周期構造から成る人工材料メタサーフェスに回路素子を組み込むことで、世界で初めて同一周波数でも波形(すなわちパルス幅)に応じて入射波の吸収率等を変化可能な新たな電磁特性「波形選択性」を報告した(参考:Wakatsuchi et al., Phys. Rev. Lett., 111, 24, 245501, 2013)。その結果、同一周波数上でも「パルス幅」という新たな自由度に基づいて異なる電波信号を識別できるようになった。しかしながら、従来設計に用いられてきた数値解析手法では波形選択性による解析空間内の電磁界への影響を観測することはできなかった。そこで本研究では波形選択性の影響を詳細に可視化可能な数値解析手法を新たに開発することで、将来の幅広い応用研究への展開に貢献することを目指した。一昨年度は共同研究先となる英国ノッティンガム大学ジョージグリーン電磁研究所を訪問し、数値解析手法の開発に着手した。ただし、提案された解析手法のコンセプトについては早期の段階に確立済みであったものの、その手法をコード化する過程において大きな遅延が発生した。具体的には、使用予定であった電磁界解析プログラムのコードに不具合が発生し、解決までに当初の想定を超える期間を要した。同問題は一昨年度開始時期までに共同研究者らによって解決されたものの、昨年度まではCOVID-19の影響によって、共同研究者らが研究設備にアクセスできない事態となった。このため、一昨年度同様に昨年度の進展も代表者によって実施可能な小規模な電磁界解析評価のみにとどまった。
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