研究課題/領域番号 |
17KK0115
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
村川 英樹 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (40467668)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2021
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キーワード | 流体計測 / 超音波 / ボイド分布 / 二相流 / 液体金属 |
研究実績の概要 |
基課題において構築した超音波トモグラフィ計測システムにおいて、適切なボイド分布再構成アルゴリズムを開発し、液体金属二相流の流動評価をすることを目的とし研究を行った。 過渡的なボイド分布を計測するため、一断面の計測に使用する超音波センサを、可能な限り少なくする必要がある。本研究では、広角超音波センサを8個使用し、50mm程度の配管において瞬時ボイド分布を計測可能とした。昨年度までに構築したトモグラフィ計測システムを用い、各センサを高速に切り替えて超音波の送受信を行い、全センサにおいて波形を取得する。得られた波形に対して、主に反射法に基づくボイド分布再構成法を構築した。一断面の計測に要する時間分解能として1ミリ秒を達成した。これを500フレーム毎秒で連続CT計測を行うことで、気泡の形状やボイド分布の計測を実現した。 常温で液体金属であるGaInSnを満たした内径50mmの円筒容器において、単一および連続して気泡を上昇させ、断面ボイド分布の連続CT計測を行った。CT計測を容器底部から20mmおよび140mmの位置において実施することで、気泡離脱周期の違いが及ぼす気泡分散への影響について評価した。更に容器上部に設置した超音波センサを用いて、ドップラ法による速度計測を行った。 計測したCT計測結果から、気泡離脱周期の評価が可能であることを示した。さらにGaInSn中において、体積等価気泡径が約6mmの連続気泡において気泡離脱周期を1~10Hzに変化させところ、平均気泡上昇速度はほぼ一定であったが、5Hz以下の条件では、連続する気泡がほぼ同一の断面を通過したのに対し、6Hz以上の周期で流動する連続気泡では、各気泡の通過位置のバラつきが大きくなった。すなわち、気泡離脱周期を大きくすることで異なる軌跡において気泡が上昇したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計測システムは構築済みであり、水-アルゴン、およびGaInSn-アルゴン二相流において最適な再構成手法について構築済みである。気泡離脱時の条件を評価するため、容器下部に設置したセンサを用いてCT計測した結果に対して、気泡離脱周期を評価する方法を確立した。構築したシステムを用いて気泡流の三次元流動評価を実施し、液体金属に起因する気液密度比および表面張力の影響による気泡流動の違いを解明可能であることを示している。特に連続して上昇する気泡を対象に、気泡離脱周期および気泡径の違いによる影響を評価できることは、気泡後流の影響を評価する上で重要となる。更に、当初の研究計画に含まれない水平磁場印加時の影響について評価を実施したところ、磁場印加の流動評価において本システムが極めて有効であることが示された。よって、当初の予定通りに研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
気泡離脱周期などの条件をより厳密に制御するため、既存の気泡注入システムに対して音響システムを用いた装置の改良を実施する。これにより、気泡離脱周期や気泡径の精緻な制御を実現する。同一気泡径で異なる気泡離脱周期の連続気泡における実験を実施することで、気泡間距離および気泡径の違いによる気泡流動への評価を行い、気泡後流が及ぼす後続気泡への影響について解明する。さらにパルスドップラ法とトモグラフィ法の同期計測を行うことで、瞬時の流動とボイド分布の比較を可能とする。さらに実際の液体金属への適用例として、水平磁場を印加する。磁場印加強度の違いによる気泡流動の違いを評価することで、気泡誘起流れに起因するローレンツ力による気泡流動への影響を評価し、その物理的メカニズムの解明を進める。
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