研究課題/領域番号 |
17KK0116
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
吉本 則子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40432736)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | PEGylation / antibody / monolith / chromatography |
研究実績の概要 |
本研究では抗体タンパク質の修飾と構造制御を行う反応・分離担体としてのモノリスイオン交換クロマトグラフィーの開発を目指し、モノリス細孔における抗体タンパク質・修飾抗体の結合特性・物質移動特性を解析し、これらに基づき細孔構造の最適化を行うこと、さらには構造制御と修飾反応をその後の分離操作と連続化し、迅速に修飾抗体を取得するプロセスを開発することを目的としている。モノリス基材とカラム骨格が一体化し、デッドエンドの存在しない貫通孔を有するモノリス担体は、拡散抵抗が少なく10nmを超える巨大バイオ分子に対して優れた流通特性を示す。一方で、多孔性微粒子型担体と比較して比表面積が少なく吸着量が低い場合がある。このため、今年度は細孔内に電荷密度・長さの異なるグラフト鎖を導入し、吸着容量を制御する可能性について検討した。また、吸着容量の測定には大量のタンパク質が必要であることから20μLの微小なカラム体積を有するミニチュア化モノリスを作成し、それらに対してグラフト鎖を導入可能であるかどうかについても調べた。リュブリャナ大学のAles Podgornik教授の研究室においてグラフト鎖の重合温度・時間・重合開始剤の種類・モノマー仕込み比を変えてグラフト鎖をミニチュア化モノリスに修飾を行い、グラフト鎖の導入量を修飾前後の重量と圧力損失の変化から見積もり、さらに合成したグラフト担体のイオン交換容量を修飾モノリス担体のpH応答特性から評価した。また吸着容量の評価はモデルタンパク質としてBSAを用い破過実験を行うことで実施した。吸着容量の高いカラムについては、塩濃度勾配溶出法によりBSAの結合特性についても解析を行い、イオン交換基密度と結合量の関係について調べ、結合容量を増加させる重合条件の特定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Ales Podgornik教授の協力により、モノリス担体の合成においては概ね順調に進んでいる。20μLのモノリス担体を用い、複数の重合方法によりグラフト型のカチオン交換担体を短期間で作製し、高吸着量の担体を作製することができ、pH応答性に基づいて非破壊的にリガンド容量の決定を行い、さらにモデルタンパク質を用いた担体性能の評価を行うことができている。一方で、抗体タンパク質の構造制御においては、検討が実施できていない状況である。抗体タンパク質の断片化反応では、反応時間・温度を最適化することにより断片化抗体を取得することができた。しかし、断片化物の濃縮操作、保存操作において回収率が低く、サイズ排除クロマトグラフィーにより未反応抗体の検出は可能であるもののproteinA、protein Lクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー操作においても、またハイスループット型のチップ型電気泳動各単位操作においても各断片化物の構造を同定するために十分量を得ることが出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、高吸着容量あるいは分離特性の優れたモノリス担体の開発と、抗体タンパク質の構造制御・修飾反応の実施を並行して行う必要がある。現在のところ、モノリス担体の合成に関しては順調に進んでいるが、抗体タンパク質に関連した実験が遅れているため、抗体タンパク質の断片化物と類似した分子量・電荷を有するタンパク質をモデルタンパク質として用い、結合特性と容量の評価を行う。また、担体上での修飾反応の検討も実施を開始する。抗体タンパク質の断片化反応については、反応から分離までの保存、溶媒置換等の操作についても見直しを行いアミノ酸・糖などから凝集抑制効果ある物質の探索や複数の抗体タンパク質を用いることで抗体毎の性質の違いが及ぼす影響についても検討を行う予定である。 モノリス担体の開発研究については、カチオン交換担体を主として行っていくが、断片化抗体の等電点によってはアニオン交換担体との結合の可能性もあることからアニオン交換タイプのリガンドについても検討を行う。また、分離モードについても分配係数の高い分離からフロースルー型の弱い結合モードについても検討を行い、低い結合容量でも実施可能な分離操作への展開も実施する予定である。
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