研究課題/領域番号 |
17KK0116
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
吉本 則子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40432736)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2022
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キーワード | モノリス / 断片化抗体 / クロマトグラフィープロセス |
研究実績の概要 |
本研究課題では、低分子化抗体を調製するための断片化酵素を固定したモノリス担体および低分子化抗体を高純度で分離回収するためのモノリス担体を作製し、これらを用いた反応分離プロセスを開発することを目的として研究を行っている。 モノリス担体の作成にはスロベニアのProf. Podogornikの協力を得て実施する予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により渡航が困難となり中断している状況が、引き続き昨年度より続いている。 このため、昨年度に検討した断片化抗体の回収プロセスを利用して、タンパク質断片化酵素を固定化した多孔性微粒子担体をカラムに充填し、流通式の低分子化抗体生成プロセスの開発を、今年度は検討した。 今回用いた酵素固定化担体の粒子径は200μm ~ 400μmであり、物質移動抵抗が大きい可能性が想定された。このため流通式反応操作における滞留時間の影響を調べるために、内径1cmでカラム長さが5cmおよび10cmのカラムに担体を、それぞれ充填し反応カラムとした。このカラムへの抗体供給時のポンプ流量を変化させることで30分から1000分程度まで滞留時間での断片化反応を行った。抗体の供給濃度は、昨年度と同様に10 mg/mLとし、反応温度は室温とした。また、反応カラムの後続に、protein Aおよびprotein Lを充填したアフニティーカラムを接続し、反応液中の断片化物および未反応抗体の回収を行った。 カラム滞留時間が360分程度で、Fabの回収は最大となり、それ以上の滞留時間では低下していった。また未反応抗体の回収量は時間とともに徐々に低下していった。電気泳動により回収液中の組成の分析をしたところ、後続のアフニティーカラムに吸着した画分において、断片化物と未反応物のバンドが、それぞれ確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、ポリメタクリレートを基材としたモノリスに断片化抗体を固定化した反応カラムの作製を予定していたが、基材の入手が困難な状況にあり、モノリス型断片化反応カラムの開発ができていないために、進捗状況としてはやや遅れていると判断した。 一方で、今年度は、モノリスではないが流通式の反応カラムの作製は行い、断片化反応にも着手するとともに、昨年度に開発した反応カラム後続の断片化抗体回収プロセスの応用の可能性についても検討を進めている状況である。 回収ステップでは、反応カラムにおいて生成したFab、未反応IgGを、それぞれ別々に吸着回収し、バルブ切り替え操作により、生成物を分けて回収可能であることを確認できている。 また、回収液の各画分の電気泳動を行い、電気泳動で確認できるレベルのカラム漏出物は確認されておらず、後続の回収カラムにおいて、断片化反応生成物はほぼ回収されていると考えられる。 断片化反応カラムの操作条件、カラム形状の最適化は十分ではなく、今後さらなる検討は必要であるが、断片化反応プロセス全体の各ステップの開発については、進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、モノリス担体との比較対象データとして、200μm ~ 400μmの多孔性微粒子担体を反応担体として用いて、滞留時間の検討を行ったが、反応時の濃度および温度についての検討を行っていない。このため、今後は、これらの反応条件がFabの生成収率に及ぼす影響について調べ、モノリス担体を用いた断片化反応条件の検討に用いる。 昨年度のバッチでの断片化反応では、収率に対する温度の影響が大きく、60℃で最大反応収率となった。反応液、反応カラムの温度制御法を開発し、さらなる反応収率の向上を検討する。 一方で、反応カラム後続のFabおよび未反応抗体を回収・分離するアフニティーカラムに対する温度の影響については、これまで未検討である。これらの温度の影響や、温度制御方法についても検討を行う予定である。
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