研究課題/領域番号 |
17KK0117
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池谷 直樹 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (70628213)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 境界層 / 都市キャノピー / 運動量フラックス / 乱流構造 |
研究実績の概要 |
本課題は,都市居住空間環境において高い危険性や大きな被害をもたらす可能性がある突風や高濃度などの事象である低頻度高リスク環境について,その発生確率と程度を定量的に評価することを目的とした基課題を理論的手法により発展させ,都市域における低頻度高リスク環境の発生機構の解明および都市乱流境界層における統計量普遍則の追求を試みるというものである.H30年度は,H31年度中の共同研究先への渡航計画を具体化させるとともに,渡航前の準備研究及びメールを中心とした共同研究者と研究遂行のためのうち合わせを行った.具体的には,先行研究として進んでいる植生キャノピー乱流場の知見について,共同研究者のこれまでの論文及び実験結果,近年の進捗状況についてのサマリーなどの提供を受けるとともに,申請者が提案する都市キャノピー上の乱流統計値に対する収支式の理論的定式や,都市乱流境界層に発生する乱流渦構造についての分析方法について議論した.また,これまでに申請者の所属先にて得られた風洞実験データ及び数値解析結果を整理することで,運動量収支に基づく都市キャノピー上空の乱流構造の理論的解明に向けた問題点を明らかにし,そのサマリーについてメールにより共同研究者との議論を進めた.加えて,渡航に向けた事務手続きとして,長期不在時の代替要員の必要性についての検討,不在時の基課題の遂行上を円滑に行うための準備として,風洞実験及び数値流体解析結果による物質伝達率計測結果を再解析するための解析ソフトを導入の検討などにより,H31年度中1年間の渡航による共同研究の遂行を計画した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度は,主としてH31年度からの渡航先での共同研究を円滑に進めるための研究準備を行った.先行研究として進んでいる植生キャノピー乱流場の知見について,共同研究者のこれまでの論文及び実験結果と近年の進捗状況について,共同研究者が考える現状の問題的についての要約の提供に対し,申請者が提案する都市キャノピー上の乱流統計値に対する収支式の理論的定式や,都市乱流境界層に発生する乱流渦構造についての分析方法について議論を進めた.これを受けて,運動量収支に基づく都市キャノピー上空の乱流構造と運動量交換の多寡を示す運動量フラックスを境界層理論によって定式化する方法を提案しすることで,H31年度の共同研究先で実施する理論研究の枠組みを整理した.また,これまでに申請者の所属先にて得られた壁面乱流境界層内の速度及び高次統計量の結果について,風洞実験データ及び数値解析結果を整理することで,渡航先での追加実験の可能性について共同研究者と打ち合わせを行った.
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今後の研究の推進方策 |
H31年度は,実際に共同研究先に赴き,事前準備の内容をもとに,i) 都市キャノピー上の乱流統計値に対する収支の定式化,ii) 都市乱流境界層における物質輸送量のモデル化,iii) 都市乱流境界層と植生乱流境界層に発生する乱流渦構造の分析と比較の三点を具体的な研究テーマとして,共同研究を行う.テーマi),ii) については,H30年度の事前準備の内容に基づき,申請者の提案する理論モデルについて,共同研究研究者のこれまでの植生乱流境界層における数値解析および風洞実験結果との比較を行うことで,モデル式の妥当性について検証と議論を行う.テーマiii) については,共同研究者が実施した観測の結果と,申請者がこれまでに実施してきた数値流体解析の結果について,分析と相互比較を行い,両者の共通項目を整理する.共同研究先への渡航期間はH31年度の1年間とし,前半の9ヶ月をオーストラリアのCSIRO (Commonwealth Scientific Industrial Research Organisation),後半の3月をアメリカのNCAR (National Center for Atmospheric Research) にて行う.テーマi) ii)を主としてCSIRO, iii) を主としてNCARで実施する予定である.
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