研究課題/領域番号 |
17KK0117
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池谷 直樹 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (70628213)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 境界層 / 年キャノピー / 植生キャノピー / 運動量フラックス / 乱流構造 |
研究実績の概要 |
本課題は,都市居住空間環境において高い危険性や大きな被害をもたらす可能性がある突風や高濃度などの事象である低頻度高リスク環境について,その発生確率と程度を定量的に評価することを目的とした基課題を理論的手法により発展させ,都市域における低頻度高リスク環境の発生機構の解明および都市乱流境界層における統計量普遍則の追求を試みるというものである.R2年度は,H30年度中の渡航計画をもとに,4月から1月初旬までの約9ヶ月間を,共同研究者であるProf. Dr. J. Finniganが所属するをオーストラリアのCSIRO (Commonwealth Scientific Industrial Research Organisation)に滞在,1月から2月の1.5ヶ月間は,もう一人の共同研究者Dr. E. Patton NCAR (National Center for Atmospheric Research)のもとに滞在し,国際共同研究を遂行した.具体的には,オーストラリアCSIROにおいて,先行研究として進んでいる植生キャノピー乱流場の知見について,申請者が提案する都市キャノピー上の乱流統計値に対する収支式の理論的定式および,共同研究者がCSIROおよびNCARにおいて実施していた植生キャノピーを対象とした乱流フラックスと乱流エネルギーのとスケーリング則について議論を行った.また,植生キャノピーおよび都市キャノピーモデルの導出過程に関する議論を行い,相互の分野における共通項目を整理するに至った.加えて,NCARにおいては,NCARが公開している膨大な音街観測データベースと数値流体解析データベースについて,共同研究者Dr. Pattonから詳細な説明を受けるとともに,乱流統計量スケーリング則を見出すために必要なデータの選定および追加解析を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植生キャノピー乱流場の知見について,申請者が提案する都市キャノピー上の乱流統計値に対する収支式の理論的定式および,共同研究者がCSIROおよびNCARにおいて実施していた植生キャノピーを対象とした乱流フラックスと乱流エネルギーのとスケーリング則についての議論を進めてきた.これらの知見およぴ共同研究者の協力により,植生キャノピーを対象とした運動量フラックスと乱流エネルギーに関する理論式を導出した.加えて,加えて,共同研究者Dr. Finniganがこれまでに行ってきた風洞実験結果および数値流体解析のデータ整理を進めている.さらに,共同研究者Dr. Pattonがこれまでに行い,NCARが公開している膨大な屋外観測データベースと数値流体解析データベースのデータの選定および追加解析を行うことで,実験,観測,理論における包括的比較を行うための準備を行ってきた.これらの知見をもとに,共同研究者と共に2019年9月頃から国際共著論文として執筆を開始した.
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今後の研究の推進方策 |
R2年度は,昨年度の1年にわたる国際共同研究の総括として,i) 都市キャノピー上の乱流統計値に対する収支の定式化,ii) 都市乱流境界層における物質輸送量のモデル化,iii) 都市乱流境界層と植生乱流境界層に発生する乱流渦構造の分析と比較の研究目的を達成するべく,論文の執筆を行う.Dr. Finniganとの共同研究により,項目i,iiについては,理論体系の整理,実験結果の選定までは既に終了し,2019年度中に共著論文の執筆に取り掛かっている.これに加えて,今後実施する屋外観測データを加えることで,研究課題終了までに一流国際ジャーナル誌への投稿する国際共著論文の執筆完了を予定している.また,項目iii については,NCARでのDr. Pattonとの共同研究により,データ解析までは進めたものの,論文の執筆には至っていない.研究期間が限られることから,今後の論文執筆にむけた理論式整理と実験データ整理に注力,今年度中に執筆開始することを予定している.
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