研究課題/領域番号 |
17KK0119
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
竹村 研治郎 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (90348821)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2021
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キーワード | 細胞接着特性 / 音響放射圧 / 弾性表面波デバイス |
研究実績の概要 |
iPS細胞を用いた再生医療などが注目される中,細胞の大量培養技術への期待が高まっており,手作業に頼っていた細胞の培養,剥離,回収,パターニングといった作業を自動化する必要がある.これまでに,培養基材に適切な固有振動モードを励振することで,酵素フリーで基材から細胞を剥離する手法や,回収・再播種を伴わない連続的な増殖培養を可能にする手法を開発した.また,培養チャンバから細胞懸濁液を回収する方法や細胞をパターニングする方法なども具現化した.しかし,細胞剥離メカニズムなどは不明であった.こうした手法を細胞培養のための基盤技術とするために,本国際共同研究では,弾性表面波(SAW)デバイスから発生する音響放射圧を培養ディッシュに対して領域選択的に照射することによって,プローブ等を必要とせずに非接触で細胞接着の力学的特性を明らかにすることを目的としている. 2020年度は,ランジュバン型超音波振動子を用いて音響放射圧をディッシュ上に培養された細胞に局所的に超音波を照射した際に微小な領域から細胞を剥離する過年度までの成果をさらに発展させ,共同研究先のUC San Diegoで製作したFocused Surface Acoustic Wave(SAW)デバイスを用いて,より微小な領域への超音波照射を可能とした装置での局所剥離の成果を得た.過年度までは細胞200個程度の領域の剥離を実証していたが,2020年度の研究によって細胞12個程度の微小領域での細胞剥離が可能となった.これは,例えばiPS細胞のコロニーに相当する領域であり,局所的剥離として極めて有効である.また,2019年度に滞在先のUC San Diegoで本研究を実施する中から発想した,Focused SAWデバイスを利用した新たな細胞塊生成方法の研究も進展し,現在国際共著論文を執筆中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本国際共同研究では当初計画において,研究全体を以下の3つのフェーズに分けた.(1) 力学特性測定装置の設計・製作と実験条件の決定(@慶應義塾大学),(2) SAWデバイスの開発と培養ディッシュへの放射圧の透過実験(@UC San Diego), (3) 細胞接着の力学特性の測定(@UC San Diego, 慶應義塾大学).これまでに,主に2018年度に (1)に関する成果が得られ,2019年度に(2)が完了し,(3)に関連する超音波照射による細胞剥離が達成された.2020年度は(3)の実験を進める予定であったが,Covid-19パンデミックの影響で研究活動が一部制限され,極微小領域への超音波照射と細胞剥離の成果に留まった. 以上のように,本国際共同研究の現在までの進捗は当初計画よりもやや遅れているため,期間延長した.2021年度もCovid-19の影響は受けると予想されるが,力学特性の測定システムは組み上がっており,期間延長によって当初計画が達成できると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で述べたように,当初計画の(1)-(3)の実行に向けて計画よりもやや遅れているものの順調に推移している. Covid-19の影響で2020年3月末に滞在先であるUC San Diegoでの滞在を3ヶ月短縮して急遽帰国したが,幸い,滞在先で製作予定であったデバイスは完了していたため,当初計画を実施することは可能である.力学特性の測定システムも組み上がっているため,実験を順次行う予定である.また,引き続きUC San DiegoのJames Friend教授とはweb会議などを通して協働し,共著論文の執筆を進める.
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