2020年度は、帰国して日本国内において研究活動を行った。当初の予定では、2020年8月に2週間の予定でクィーンズランド大学において膨張波管X2を用いて実験を実施する予定であったが、新型コロナウィルスの影響により中止となった。そのため2019年度に取得したアルゴンを試験気体とした2次元くさび模型周り流れのイメージング分光計測の結果について解析を実施した。昨年度開発した原子衝突過程を考慮した衝突輻射(CR)モデルにより、電子温度と電子密度をパラメーターとしてアルゴン原子の励起準位密度を計算する。そして実験で取得したアルゴン原子スペクトルの波長の発光強度を導出して、計測スペクトルとのフィッティングにより2次元楔模型周りの電子温度と電子密度の空間分布特性を取得した。またアルゴンプラズマの熱化学非平衡過程を考慮して楔模型周りの流れ場の数値計算を実施して実験結果と比較した。これより電子温度に関しては、実験と計算両方とも同じオーダーであり良い一致を示している。しかしながら、電子密度に関しては、実験値が計算値よりも一桁程度低い値となっている。この原因としては、数値解析にプリカーサ現象の影響が考慮されていないことが考えられる。そのため、今後はプリカーサ現象を考慮するために、流れ場と輻射輸送を連成した解析が必要になる。現状ではプリカーサ現象を組込んだ1次元数値解析プログラムがすでに開発しているために、輻射輸送との連成解析化を進めている。
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