研究実績の概要 |
本研究では、動物由来成分を含まないヘム含有ポリマーを開発し、免疫賦活化剤としてワクチンアジュバントへの応用を目指す。マラリア原虫により生産される疎水性ヘムダイマー集合体であるヘモゾイン結晶がトール様受容体9(Toll like receptor-9: TLR9)のリガンド分子として機能することが報告されている(Cell Host & Microbe 7, 50-61, 2010)。申請者は、新規免疫活性化剤の開発とヘモゾインの免疫活性化機構の解明を目的として、ヘモゾインの構成最小単位であるヘミンを修飾した水溶性ヘム含有ポリマーの開発と評価を進めている(Int. J. Nanomedicine, 13, 4461-4472, 2018)。ヒトとマウスの免疫細胞を用いた評価で、開発した水溶性ヘム含有ポリマーは免疫活性化能を示す結果が得られており、今後ワクチンアジュバントとしての医薬応用が期待される。しかしながら、原料となるヘミンは動物血液から調製された物質であるため、ウィルス感染の危険性や宗教上理由から実用化に課題が残る。この問題を解決するためにスウェーデンLund大学のLeif Bulow教授との国際共同研究によりの植物により組換え生産したヘモグロビンならびに微生物が生産するヘミンを水溶性ヘム含有ポリマーの原料として用いることを目指す。 昨年度と本年度は、新型コロナウィルスの感染の広がりの影響で渡航ができなかった。そのため、豚血液由来の市販へミンを原料として、マラリア原虫においてヘムからヘモゾインの合成に関与しているヘム無毒化酵素(Hemozoin detoxification protein (HDP))を用いたヘモゾインの酵素合成方法を確立した。酵素合成ヘモゾインの細胞と実験動物を用いた機能評価を予定に先行して日本で実施した。マウスの腹腔内に酵素合成ヘモゾインと既存アジュバントで水酸化アルミニウム結晶(Alum)を投与した結果、酵素合成ヘモゾインはAlumと同等の免疫活性化能を示しめすことを明らかとした。
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