研究課題/領域番号 |
17KK0124
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
石井 治之 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授(テニュアトラック) (80565820)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2022
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キーワード | 金ナノ粒子 / 固体触媒 / 酵素 / カスケード反応 / 3次元集積体 |
研究実績の概要 |
酵素は温和な条件で有機合成や材料合成を効率的に行うことができるため、環境低負荷な工業プロセスを実現するために欠かせない触媒である。しかしながら、酵素自体が高価であること、安定に運転できる反応条件が限られていること、また一度失活すると再生が困難であること、など、改良すべき課題も多い。固体触媒の分野では、固体触媒をナノサイズ化したナノ粒子を用いた研究が広く行われている。触媒ナノ粒子は高い表面積に起因する優れた触媒能に加え、繰り返し利用できるのが特徴である。また、近年では酵素が行う各種酸化・還元反応を触媒することが報告されており、酵素の代替の可能性が検討されている。 本研究では酵素および触媒ナノ粒子による新たな触媒反応プロセスの開発を目指す。例えば、温和な条件で新たな材料創成となる反応プロセスの構築や、酵素や固体触媒などの触媒能を組み合わせた反応(カスケード反応など)の実現を目的に研究を行う。 2021年度は、これまで行ってきた金ナノ粒子の触媒能に加え、金イオンの触媒能に着目した。金ナノ粒子の触媒能では、酵素の場合は活性が低下する反応条件で金ナノ粒子の触媒能が向上する場合があることを明らかにした。金イオンの場合は、酸化重合を効率的に触媒することがわかった。この反応と同時に生成する金ナノ粒子と重合で生成する機能性ポリマーを複合化できれば新たな材料創発プロセスの開発が期待できる。 さらに、金ナノ粒子合成の際に、金ナノ粒子の3次元集積体を簡便に作製できる手法を発見し特許出願した。金ナノ粒子集積体は局所的に高い触媒能が期待できるだけでなく、電子デバイスの素材など幅広い用途に利用でき得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金ナノ粒子の触媒能については、酵素が失活する条件で金ナノ粒子の触媒能が向上する条件を明らかにできた。これは金ナノ粒子が酵素より適した触媒反応条件が存在していることを示している。また、金イオンの酸化能を利用することで、機能性ポリマーを合成する酸化重合を開始できる条件について幅広い知見を得た。 金ナノ粒子合成では、5nm~50nmの範囲におけるサイズ制御に成功した。また金ナノ粒子合成に関する研究の過程で、金ナノ粒子が自発的に3次元構造体を形成することを発見した。この作製法に関しては特許出願できた。 上記の金ナノ粒子の知見を踏まえ、ナノ粒子全般のハンドリングに関して発表を行った(招待講演)。共同研究先での実験やディスカッションは実施できなかったが、研究の進捗状況のオンラインでのやり取りを通して、これまで得られた成果をいくつか論文発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで本プロジェクトで得られてきた知見より、酵素が失活する一方で金ナノ粒子の触媒能が良好に発現する条件において、そのメカニズムを明らかにする。酵素や金ナノ粒子を組み合わせた触媒システムの構築を行う。 また、金ナノ粒子あるいは金イオンの触媒能(酸化能)を用いた材料合成プロセス開発を行い、生成する金ナノ粒子と機能性ポリマーの複合化を検討する。 さらに、金ナノ粒子3次元集積体についてはその構造評価を行うとともに、金ナノ粒子の触媒能に起因する集積体の機能や導電性など用途展開が見込める特性について評価する。
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